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フランダースの犬 [テレビ]

 会社で隣りの職場のWさんと雑談していたとき、犬の話になった。Wさんは昔飼っていた犬に「フランダース」という名前をつけていたそうだ。
「フランダースの犬ってわけですか」
「そのまんまだろ? あははは。」
 「フランダース! カモン!」とか「フランダース! お手!」とか言っていたのだろうか。いかにもウケを狙ったネーミングである。これには笑えた。

 「フランダースの犬」といえば、昔テレビでアニメ化されて一世を風靡したあの名作である。カルピス子供劇場で、「アルプスの少女ハイジ」の後の番組がこれだった。僕はリアルタイムで見ていた世代だった。
 ところで、この番組、当時僕はいまいち好きになれなかった。見ていてなぜかすっきりしなかったのだ。この作品は、当時見ていた子供たちが母親になって、自分の子供に見せているというくらいの名作。にもかかわらず、なぜ僕は好きになれなかったのか。当時の自分は、それほどへそ曲がりだったのだろうか。名作には違いない。それにしても・・・。考えこんでしまった。そして、しばらく考えて、ようやく理由らしきものがわかってきた。

 当時、テレビで放送していた子供向け(特に男の子向け)の番組というのは、悪者がでてきて、それを正義の味方がやっつけるというパターンばっかりだったのだ。「ウルトラマン」や「仮面ライダー」なんか、みんなそうだった。「ドラえもん」だってジャイアンにいじめられたのび太をドラえもんが便利な道具を出して助けるような構図になっている。つまり勧善懲悪が基本だったのだ。大人向けの番組だって同様。「水戸黄門」「銭形平次」「遠山の金さん」のような時代劇から現代の刑事ものなんかもみんなそうだ。つまり「善」=「強」が基本なのである。

 ところが、「フランダースの犬」は違ってた。理不尽な目にあってもひたすら耐えるネロが、どんくさく見えた。子供の頃の僕は「お前そんなことされて、くやしくないのか?」と歯がゆく思ってたのだ。今思えば。そこで、ちょっと最後の方で物語を捻じ曲げたらどうなるか、勝手きままに空想してみた。

 ネロが雪の中で、アロアの親父の金を拾ったとき、それを馬鹿正直に届けるのが本来のストーリーだが、ここでネロの心の中で葛藤がおこることにする。「これをネコババして逃げようか・・・」と。そして、その通りにしてしまう。
 ネロはアントワープに出て、その金を資金にして非合法組織を立ち上げ、大もうけする。アロアの親父は金を落として会社が倒産。やがて闇の帝王になったネロは、アロアを愛人にし、昔自分をいじめたアロアの親父を使用人としてこき使う。ネロは「暴君ネロ」と呼ばれて人々に恐れられる。

 そして恐れ多くも教会の神父からルーベンスの絵を騙し取り、ご対面。感動しているところを、飼い犬のパトラッシュに噛まれて死ぬ。ラストシーンでは、アロアの「ネ~~~ロ~~~~!!」という叫びがこだまする。ってのはどうかね。

 冗談はともかく、この作品のよさは今にしてよくわかる。本当の強さというのは肉体的に強いことだけではなく、どんな状況に置かれても、自分の正義や信念を貫き通すことなんだ。ネロは子供であり、かつ貧しく、つまりは社会的弱者であったけれども、弱者なりにそれを貫いて死んだ。だからこの作品は、名作として時代を超えて愛されているのだと思う。まあ、いささか出来すぎた子供だという考え方もあるが・・・。


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くるみ

ひぐらしさん、こんにちは♪
くるみが見ていた頃は、世界名作劇場とかだったような、ハウス食品とかが提供していたような。。。う~ん、記憶は曖昧になっていますが、カルピス!?というのがとっても新鮮でした。
くるみの親も、悲しい方向へ悲惨な方向へと、だんだんストーリーが寂しくなってしまうから、という理由から(くるみたちに)見せなくなったそうです。
また、その前のハイジが大団円だっただけに、その落差を強く感じたようです。
くるみ自身はハイジすらちゃんと記憶として残っているのは再放送でなので、よく【名作の最終回特集】で必ず出てくる、ネロとパトラッシュが天へ召されるシーンがいつも謎で、名作という理由も未だにいまいち解っていなかったりします(無知)
悪徳ネロ&狂犬パトラッシュにはびっくりですが(^^;、ネロの人間の成熟さを思うと、まだまだ未熟者のくるみ故に修行の日々にございます_| ̄|○
by くるみ (2006-04-02 02:00) 

ひぐらし

 確かに子供用としては悲惨な物語ですよね。一発逆転のシナリオとして他に考えられるのは、お金を届けた時点でネロが気を失うこと。そうすれば、そこで介抱されて、目を覚ましたときには、アロアの親父も仏様のようにやさしくなり、人生が変わったのにねえ。10年後はアロアんちに婿に入り、情け深い地主として土地のみんなに慕われるようになる。これで大団円。
 悲しい終わり方としては、アンデルセンの「人魚姫」だってそうですよね。ハッピーエンドを好むのは現代人の感覚なんでしょうかね。つまり苦労したら報われる設定を好む。昔の人は、苦労しても報われない人が多かったから、悲劇的な結末の方が共感を呼んだのかも知れませんね。
by ひぐらし (2006-04-02 12:41) 

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