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富士山に登る(1) [登山]

 7月25日(土)に、富士山に登った。同行者は、会社の後輩のS君とM君。河口湖口から登り、須走口に降りる計画を立てた。二人は、僕よりもだいぶ若いが、登山の経験はない。だから、6月の初めにまず大山に登って、プチ登山経験を積んで今回の本番を迎えた。二人とも、大山に行ったせいで装備の重要さに気づき、それなりに色々と道具を揃えて気合を入れた本番になった。

 前日7月24(金)、河口湖のビジネスホテルに宿泊。翌朝、南側の窓から富士山がよく見えた。僕が思うに、雪化粧をしていない富士山は、さほど美しいものではない。夏の富士山は見るより、登った方がいい。北側の斜面には吉田口登山道に沿って山小屋が並んでいるのがよく見える。
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 空を見上げて仰天した。山頂よりも高い位置に、巨大な雲の塊がある。雲の色といえば、普通は白、グレー、黒といった彩度のないものだが、こいつは黄色味を帯びている。ドブの中の淀みに澱が溜まっているようだ。しかも、写真を撮ったときには気づかなかったが、改めて写真をよく見たら、なんと顔がある!! しかも、富士山を見下ろしている。「見るもおぞましい」という形容がぴったりだ。(注1)
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 すこし時間をおいて撮ったのが下の写真。今度はこの顔が不気味に笑っている。ぞ~っとして、鳥肌が立った。生半可な心霊写真より、こっちの方がよほど恐ろしい。大魔人がまさにこれから富士山に襲いかかろうとしているように見える。実際、これからひどい目に会うことになるのだった。
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 6時30分、ビジネスホテルを出発。予約しておいたタクシーで、富士スバルライン経由で五合目についたのは7時10分。車を降りて、いきなり震え上がるような冷たい突風に見舞われ、3人とも、建物の陰に身を潜めて、あわてて重ね着をした。「今年の富士山はものすごく寒いらしいぞ」という噂は本当だった。

 下の写真は、河口湖登山口の門の前に立つひぐらし。同じところで29歳のときに、撮った写真があったので並べてみた。ひぐらしの老け方はいうまでもないが、看板の老朽化にも17年の歳月を感じる。(ぜんぜんメンテしてないんだね。看板だってメンテしやきゃ、「いつまでも美しく」はいられないんだよ)
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 さて、7時30分登山開始。元気に登り始めたはいいものの、そのあと7合目についた頃から、頂上から吹き降ろすガスをみた。
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 この頃から風は強くなり始め、雨も降り始めて、どんどん強くなってきた。景色を楽しむどころではない。写真を撮っている余裕もないし、そもそも撮りたくなるような風景がない。登ること以外にやることがないので、途中休憩を挟みつつも、ただひたすら登った。頂上に着いたのは14時30分頃で、すでに土砂降りの状態だった。

 富士山には、僕は過去2回登っているが、1回目に軽い頭痛を感じただけで、特に高山病に悩んだことはなかった。でも今回は7合目あたりから、立ちくらみを覚えた。M君もこのあたりで、息苦しさと動悸が激しくなるのを感じたという。

 山頂の山小屋にチェックインしたのは、その日の予約客の中では僕らが一番だった。M君はザックカバーがなかったせいで、またS君もレインスーツがイマイチだったせいで、衣類を濡らしてしまったので、これを乾かし始めた。僕は当面することがなく、寝床に横になって一休み。
 それにしても寒い。凍えるようだ。この寒さで眠れるのだろうか。部屋の中でこれだけ寒いのだから、低体温症で死ぬ人の寒さはいかばかりか、と恐怖すら覚えた。

 寒さを感じた原因には空腹もあったと思う。人間とは、寒いときに腹が減っていると、余計に寒さを感じるものらしい。そういえば、「雪山でビバークするときでも、空腹でなければなんとか持ちこたえるものだ」と言うのが、加藤文太郎(小説「孤高の人」)の持論だった。冬山でも夏山でも、原理的には同じだろう。エネルギーをとっているのといないのでは発熱量に違いがでる。寒くはあったが、17時に夕食をとってからは、大分体が温まった。

 19時の消灯までの間は、必死でレインスーツを乾かした。寒い寝室に寝て風邪をひくようなことがあったら一大事。とにかく持っている衣類を全て着こんで寝ようと思ったのだった。

 夕食の頃からS君の様子がおかしかった。食欲がなく元気がない。頭痛も寒気もするという。どうやら彼にも高山病の症状が出始めたようだ。山小屋が気を利かせてくれて、食堂で、一斗缶の中で木炭を炊いてくれていた。彼はその火の前を動こうとしない。

 よそのグループが僕らの回りに集まって来て、衣類を乾かし始めた。事実上乗っ取られた状態になってしまったので、僕とM君は早々にそこから離れたが、S君はその場を死守していた。僕を呼んで、リュックの中から薬を持ってきてくれと言った。あのやかましい環境の中で一人で席を死守しようとするのは、よほど症状が悪いのだと思ったので、僕はザックごと持ってきて彼の脇に置き、それから、夜に備えてS君のレインスーツを乾かしてあげることにした。

 S君のレインスーツは、借り物で、だいぶ古いものらしく、雨が染みていて、容易に乾かなかった。僕のとM君のものは、すぐに乾いた。(僕のは今年買ったばかりだし、M君は今回のために新品を購入した)

 S君の借り物は、有名ブランド品だった。しかし、そのプリントされたロゴマークが、乾かすにつれて、どんどん剥がれ落ちてくる。つまり古いのだ。古いレインスーツは性能が落ちるということが、よくわかった。しかも使っていないと、性能が劣化しているのに気づかない。(つづく)


(注1)
 あとで、本屋で気象関係の本を立ち読みして調べたところ、この雲は、通称「吊るし雲」と呼ばれるもので、山頂を風が通り過ぎたとき、山の後ろ側で気流が脈動を起こして渦を巻き、その部分に出来る雲らしい。悪天を告げる雲として古くから知られているという。要するにこの雲が出たら、ヤバイということだ。平地と違って、山があると、そこで気流が乱れるので、面白い雲がたくさんできるようだ。悪天候のときにしか見られない風景(良きにつけ悪しきにつけ)は確かにある。


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ぶたりんご

早くつづきが読みたい!
by ぶたりんご (2009-08-01 06:39) 

ひぐらし

ぶたりんごさん、こんにちは。(^o^) 続きをアップしましたので、ご覧ください。
by ひぐらし (2009-08-01 11:13) 

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