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タイのジャスミンライス [自炊研究]

 平成の米騒動って覚えているだろうか。あまり若い人は知らないかも知れない。あれはいつのことだったんだろうと調べてみたら1993年だった。もう20年近く経ってしまったことになるが、なんだかつい最近のことのように思い出される。ウィキペディアを調べてみたら、だいたい次のようなことが載っていた。

1. 1993年に天候不良が原因で米が記録的な不作になり、国内の備蓄で補いきれず、米の価格が急上昇した。
2. 日本政府は各国に米の緊急輸入を打診し、タイが自国内の備蓄を放出する形でこれに応じたが、日本の消費者には受け入れられなかった。
3. 翌年1994年6月に沖縄の早場米が流通しはじめて沈静化に向かい、夏は米が大豊作となり完全に収束した。

 ・・・ということらしい。中でもよく覚えているのが、タイから輸入した米の話である。あの頃、ブレンド米というのがあって、日本の米にタイから輸入したインディカ米を混ぜ合わせたものが売られていた。僕の勤務先の社員食堂でもこれが出されたし、レストランでも一時的にこれが出されたが、非常に評判が悪かった。理由は「不味いから」。

 それにしても、この「不味い」という言い方はあんまりだと思う。食べ方が間違っているのである。日本の米とインディカ米は性質が全く違う。だから調理方法も違うし、食べ方もそれぞれに最適な食べ方があるのだ。混ぜて食べたって美味しいわけがないのである。間違った食べ方をしておいて、「日本の米は美味い、インディカ米は不味い」と決め付けるのは、どう考えてもおかしい。

 同じインディカ米でタイ産のものとベトナム産のものを比較してどちらが美味しいかという比較は成立する。「コシヒカリ」と「ササニシキ」はどちらが美味しいかという比較も成立する。しかしジャポニカ米とインディカ米はどちらがおいしいかという比較はできない。牛肉と鶏肉はどちらが美味しいかと言っているようなものである。

 日本の米にインディカ米をブレンドする愚は、うるち米にもち米をブレンドすることを想像してみれば理解しやすい。つまり緊急輸入した米がインディカ米ではなく、もち米だったことを想像してみるのだ。日本人の多くは、もち米の食べ方を知っている。だからうるち米ともち米を混ぜようとは絶対に考えない。たとえ政府の役人がブレンドを推奨したところで、「もち米にはもち米の食べ方がある。ふざけたこと言うな」と一蹴するだろう。

 しかしインディカ米の場合は事情が違った。日本人(政府の役人含む)のほとんどがインディカ米の食べ方を知らなかったのだ。日本の米と同じように食べられるのだと勝手に思い込んで、混ぜ合わせて同じ釜で炊いたのである。その結果が「不味い」であり、「こんなもん捨てちまえ」であった。自国の備蓄を放出してまで日本人を心配してくれたタイの人々や政府には、本当に申し訳のないことをしたものだと、つくづく思う。

*** 

 さてさて。このたび、久しぶりにタイ産のインディカ米を購入した。商品名は「ジャスミンライス」という。タイの米の中でも最高品質のものらしい。Amazonの通販で、5kg 2974円。(2012年6月時点。ただし販売者により差がある) スーパーで買うコシヒカリがだいたい2000円だから、これよりも高い。この高い米を何故買ったかというと、チャーハン系の料理を日本の米で作ることに限界を感じたからである。

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 僕が最初に購入した料理の入門書にチャーハンのレシピが載っていた。これによるとパラパラ(ご飯の一粒一粒が互いに癒着せず分離した状態)に仕上げるために、あらかじめ米に卵を絡めておいて、それを炒めるという方法が紹介されていた。この方法で作ると、確かにパラパラになる。しかしドライカレーとかチキンライスを作ろうとすると、卵がないのでこうならない。べっちゃべちゃなものが出来上がる。

 随分昔、あるお店(洋風の居酒屋だった)で仲間と飲んだときに食べたドライカレーをふと思い出した。注文して出てきたのは、大きな皿に山盛りにされた4人前くらいの量のドライカレーだったが、これがスプーンで掬おうとすると、サラサラして簡単に山が崩れる。まるでポン菓子である。なるほどインディカ米とはこういうものか、とそのとき初めて知ったのだった。

 チャーハンみたいに、ご飯を他の食材と一緒に混ぜて炒める料理は、インディカ米を食べる文化圏の人たちが考え出した料理である。ちなみにドライカレーってのはインディカ米の地域のものではなく、日本のカレーライスのバリエーションだそうである。ただ、要するに「カレー炒飯」だから、インディカ米で作れば上手に作れる(よく混ざる)ことは間違いない。

【結論】炒飯はインディカ米で作るのが正しい。

 かくして、Amazonで購入したインディカ米を使って、チャーハンを作ったら、これが上手に出来ること出来ること。フライパンの上でサラサラと流れてくれるので、簡単に煽ることができるから他のものと混ぜやすい。ダマにもならない。「そうだよ。これだよこれ。この米だから、この料理が成立するんだよ」 嬉しくなり調子に乗り、一週間ほどどっぷり浸かって、いろいろ作った。代表作を載せておく。

ドライカレー。
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オムライス。
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炒飯(標準)。
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カニ炒飯。
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鮭レタス炒飯。
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牛肉ライス。
(ひぐらし自己流。挽き肉と玉ねぎを焼肉のタレで炒め、インディカ米のご飯を絡める。簡単だけど美味!)
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 何しろ、混ぜやすいのが最大のポイントである。この米を使って炒飯を作ると、なんだか自分の腕が上がったように錯覚して楽しくなる。いい買い物をした。


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Mad Scientist N添

なかなかコアなところに手を出したね^^;
タイ米騒動の真実は、タイに駐在した人なら良くわかるんだ。

それにはまず、タイの食生活を考えるとわかりやすい。
タイの食生活において、米はひぐらしさんのチャーハンのように、何かにあわせて食べるものであって、ご飯単独で食べるものではないんだね。その際、ひぐらしさんが調理の際に感じたように、日本の米のように粘っては都合が悪い。つまり、タイで美味しいとされるお米は、パラパラしなければならない。
これを単純に日本の米に置き換えると、ぱさぱさのお米になる。つまり、古米。古い米(もちろん、限界はあるのだろうけど)ほど美味しいとされるのがタイの文化となるんだね。

タイの人たちは、日本の危機を聞きつけ、タイで一番おいしいとされるお米を送ってくれた。タイでは、日本で美味しいとされる新米にはあまり価値はなくて、日本に対する救いの手にふさわしくないと考えてくれたんだろう。

でも、双方の食文化交流が希薄だったのが災いしたんだね。
彼らが、自分たちが食べたい筈の良い食料を送ってくれたのに、それが裏目に出てしまった。。。

そんな話を、東南アジアにずっと駐在していた人から聞き及んで以来、日本人として、なんて申し訳ないことをしたんだと、ずっと気にかかって仕方がないよ。
by Mad Scientist N添 (2012-07-05 23:20) 

ひぐらし

N添さん、こんにちは。タイの人にとっては、古米ほど価値があるという話は、初耳でした。
 食文化交流が希薄だった、つまり 日本人がインディカ米に慣れ親しんで来なかったというのは、結局、政府の保護政策によるところが大きいのでしょうが、今後は、品種が違うなど競合しないところはやはり新しい市場を作らないと、鎖国しているような状態になって、結局は、調理法も知らずに不味いと言って捨てるような「世間知らず」「世界知らず」なってしまう。特に、料理のプロ達が、アジア料理ではインディカ米を積極的に使うような、こだわりがあってもよいように思えます。
 この記事を書いたあと、中華料理の店で炒飯を何回か食べましたが、いずれも、相変わらず日本の普通の米を使ったものでした。日本の米を使う場合は、どうしても油っこくなるようで、やはりこれは邪道なんだなと思っている次第。
by ひぐらし (2012-07-07 12:38) 

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