SSブログ

僕が天文少年だった頃(6) [天文]

【天文学への招待(河出書房新社)】 ~さあこれから何をしようか~

 昨年の12月に熱を出して病院でインフルエンザの検査を受けたときのことである。会計の待合室で懐かしい本を見つけた。河出書房新社の「天文学への招待」(村山定男・藤井旭著)。内容は天文学の概論である。中学生時代に本屋で立ち読みをしていた本だった。買わなかった理由は単純に経済的なものである。当時は欲しいものがありすぎて、この本は、優先度が低かったのだ。
01.jpg

 これも古本で取り寄せてみた。後でわかった話であるが、この本もあかね書房の「科学のアルバム」と同様、現役で版を重ねて刊行中らしい。こちらもやはり40年選手の良書であり、中学生のひぐらし少年が本屋で夢中になって立ち読みしただけのことはある。

 星の世界の話を、万遍なく語ってくれる。繰り返すが非常によい本で、天文学に興味がある人の入門用にはもちろん、すでに天文にハマっている人にも知識の整理になる。中でも僕が一番印象的に感じたのは、天文学の起こりのところだった。

 大昔の人々が天体観測をするようになった理由は暦を作るためだった。昔の人にとって、暦は春夏秋冬の四季であるとか、雨季と乾季の入れ替わりといった、周期的に繰り返す自然現象を予測するために必要なものだった。暦があれば、いつ種を蒔き、いつ収穫するなどといった生活に密着したイベントの時期を決定できるようになる。暦作りは為政者にとって重要な仕事だった。

 季節の移り変わりは地球が公転軌道のどの位置にあるかで決定する。星や太陽を観測すれば、地球の位置がわかる。大昔の人は、天動説を信じていたくらいだから、地球が太陽の周りを回っていることは知らなかったが、自然の周期が天体の運行と関係があることは経験的に知っていた。

 確かにそうだよな、と思う。今日が何年何月何日であるということは、今や世界中の共通認識になっているが、暦が無い時代だってあったのだ。自分が大昔の日本列島に新しい国家を作って帝になったとする。そして下々の民のために暦を作ろうと思い立ったら、一体何を基準にして作ろうとするか。おそらく、こんな話になるのではないか。下記は僕の想像である。

 まず、星の日周運動を観測して、天球上の星の動かない位置(現在の言葉でいうなら”天の北極”)を定める。この方向を北とし、その正反対の方向を南とする。そうすれば東と西は自然と決まる。

 太陽が昇って真南に来る(南中する)時刻を正午とする。この時刻を基準にして、翌日の正午までの時間を1日の長さと定める。これを24等分した時間を1時間とし、それをさらに60等分した時間を1分とする。(毎日太陽が南中したら山のお寺の鐘を鳴らして民に知らせるサービスなんかしたりして)

 毎日の太陽の高度を測定し、高度のもっとも高くなる日を夏至、もっとも低くなる日を冬至と定める。その中間を春分、秋分とする。ある年の夏至の日から、次の夏至の日までの時間を1年と定める。1年の中にある日数を調べると365日であることがわかる。ただし、ぴったり365日ではなく、4年に一回1日足さなければならないことは、運用している間に経験的にわかってくる。

 一年の間に星をずっと観測していれば、深夜0時に南中する星が少しずつ動いていき、1年たつとまた同じ星が来ることがわかってくる。このような観測事実を少しずつ積み上げて暦の精度は次第に上がっていく。ざっとこんな感じではなかろうか・・・。おそらく暦作りというのは、大昔の人々にとっては最先端の科学で、それに従事する人は選ばれたトップエリートだったのではないかと思う。

***
 病院の待合室でこの本を見つけ、懐かしくて古本屋で取り寄せ、このことがきっかけになって、他の本も取り寄せ、望遠鏡のレストアをやり、今回の一連のシリーズ記事を書いたというわけである。

 思い出に浸るのは楽しい。しかし同時に、昔やり残したことがたくさんあることに気付いてしまうものだ。良く言えば情熱が燻っている。悪く言えば煩悩の炎がまだ燃えている。煩悩だろうが情熱だろうがどっちでもいい。自分は今、やりたいことが山ほどある中で、天文関係では何をしたいのかを考えてみた。

 天文のプロの仕事は「観測」して「発見」すること。これに対しアマの楽しみは「観望」である。星を見て「きれいだな~」と感動する。ときにはそれを写真に撮ったりする。いい写真が撮れて満足する。次はあっちを狙ってみようか・・・。そういう意味では観光旅行やハイキングと本質は変わらない。対象が宇宙になっただけである。(プロ顔負けのことをする人もたまにはいるが、あくまでも例外)まずはこれが大前提となる。

 目的が天体の観望や写真撮影ならば、そのための機材が必要で、望遠鏡は機材の中の一つである。やっぱり自分の嗜好から考えて、望遠鏡作りと写真撮影に走るだろうなと思う。これを昔からやりたかったのだ。ちゃんとした望遠鏡とカメラがあれば、もっともっといろいろことが出来たはずなのだ。

 ああ、これで人生の楽しみが、また一つ増えてしまった(笑)。

(おわり)
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。