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電子レンジ ~今と昔~ [雑文]

 先日、6月の始め、長いこと使っていた電子レンジが壊れてしまった。1993年製。買ったのは僕が30歳のときである。この電子レンジには、ちょっとした思い出がある。新しく買ったものの話と合わせて、ちょっと書いてみたい。

 1993年と言えば21年前、僕がちょうど30歳のときで、当時は東京の事業所に勤務していた。独身寮を出て一人暮らしを始めた頃で、食事を作ったり温めたりするのに電子レンジが欲しいな、と思っていた。その話を職場でしたところ、先輩のH女史(当時33歳)が、「電子レンジには便利な機能がたくさんついているけど、普通の独身男性は、たぶんそんな機能は使いこなせないだろうから、温めるだけの単機能のものにした方がいいよ」と力説された。非常に納得できる話だったので、言われた通り単機能のものを購入した。

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 以来ずっと使い続け、21年後についに寿命が来てしまった。温め中に急に動作が止まってしまい、ヒューズを調べてみたら、切れていたので交換した。ところが起動すると、すぐにまた切れてしまう。これはヒューズ以外のところに問題がある。しかし、それがどこなのかを追及する必要も、もはや無かろう。21年も使い続ければどこが劣化してもおかしくない。正常に動いていて、ある日突然火が出たりするのだ。これはもう、お役御免にして新しいのを買うべきだと判断した。

 アマゾンで品定めをした。このとき、またあのH女史の言葉を思い出し、温めだけの単機能のものが8200円で売られていたので、これを選んだ。安い! で、いくつか気づいたことがある。
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【気づき其の1】
 箱を開けて製品を取り出して思った。今まで使っていたものと外見がなんとなく似ている。勝手な想像だが、こういう昔からある単純な機能のものは、もしかしたらベースになる設計が共通で、そこに各メーカーが独自のアレンジをしているのではないだろうか。枯れた製品だからもう設計変更はほとんどない。そういうものを東南アジアの安い労働力で作るから、8200円という格安な値段で買えるということなのだろう。

【気づき其の2】
 以前の電子レンジは扉が開いたら運転が停止し、扉を閉じたらまた元の通りに運転が始まるようになっていた。これは最初に時間を設定して、少し運転してから扉を開け、温まり具合を見てまた扉を閉める、なんていうやり方ができて、それなりに便利だったのだが、昨今の安全思想には反している。今回買ったものは、一旦扉を開いたら、再起動を掛けないと運転が始まらないようになっていて、これは現代の安全思想に沿っている。(→(参考)インターロックの話)

【気づき其の3】
 昔の電子レンジは、設定時間が過ぎると、「チン!」とベルが鳴っていた。しかし今のものは、ピー、ピー、ピーという電子音が鳴る。もう10年くらい経つと、「レンジでチンする」なんていう言い回しが理解できない世代が現れそうである。

【気づき其の4】
 20年の間に、会社の組織もいろいろと変わり、僕もいくつかの部署を渡り歩いたが、今、ふたたびH女史と同じフロアで仕事をしている。H女史も僕と同じだけ年をとったことになるが、さほど老けたように見えない。あの当時は職場が若く、当時33歳だったH女史は、すでに自他共に認めるお局様だった。しかし現在、彼女と同じグループの女性の中では、34歳が最年少である。会社の高齢化が進んでいるのを実感する。

 ・・・とまあ、そんなわけで、思い出の家電とおさらばすることになり、少しセンチメンタルな気持ちになってしまって、一筆書いた次第。

*****

(参考)インターロックの話

 電子レンジは、加熱に用いるマイクロ波を外部と遮断するために、扉を閉めないと運転できないようになっている。また運転中に扉を開ければ止まってしまう。一般に装置の運転には安全に運転できる条件というのがあって、その条件を外れたら運転を停止するように作るのが普通である。その働き、もしくは仕掛けを専門用語でインターロックと言う。念のため馴染みのない人のために説明してみる。日常生活の中で、結構よく見られるものなのだ。

 よくあるのが過昇温防止装置。ガスコンロには温度センサのついたものがあって、揚げ物をしているときに温度が上がりすぎるとガスを遮断する。ヘアドライヤなんかも連続運転しすぎて温度が上がると止まってしまう。どちらも火災防止を意識したものだ。

 通勤ラッシュの駅で、すし詰めの電車の扉を駅員が必死で閉めているのをよく見るが、これは扉が全部閉じなければ、電車が走れないようになっているからである。また走行中に扉が開けば電車は緊急停止する。理由は(言うまでもあるまいが)開けたまま走ると危ないからである。

 もっとも、停止したらまずい機械だってある。例えば飛行機が空を飛んでいるとき、なんらかのインターロックがかかり、エンジンが全停止したら、墜落してしまう。こういう場合は、少なくとも処置は「停止」ではない。例外的な措置になる。

 さて、今、シュレッダーが何かの原因で緊急停止したとしよう。ユーザーが、カバーを開けて、手作業で原因を取り除いたら、その途端に運転が再開してしまった。さあ、どうなる? もしもカッターのところに指があったら、おそらく指を何本か失うだろう。装置の規模によっては人命にかかわることもある。

 つまりインターロックがかかって装置が停止した場合、その原因を取り除いた途端に装置が再起動するようでは危ないのである。だから原因を取り除き、安全条件を揃えた上で、機械ではなく人が再起動をかけるようにしなければならない。昔の、「扉を閉じたら再起動してしまう電子レンジ」は、この観点から見て問題があるのだ。現代のものはこの安全思想が明確に反映されている。そのことが今回の買い替えで良くわかった。



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