SSブログ

紙で作る多面体その2 [数学]

 このブログにたまに登場するIA子という中学生時代の同級生がいる。馬が合うので、今でもたまに連絡を取り合っている。彼女は今の感覚で言えば早婚で、23歳(注1)のときに結婚し、しかもハネムーンベビーができ、第一子を産み、ママになってしまった。妊娠中に、一回クラス会があったのだが、つわりがひどくて出られないらしいという話を聞いたのを覚えている。

 そして月日は流れ、その第一子のU子ちゃんが中学生になった頃の話である。IA子のメールでU子ちゃんの夏休みの宿題の話になった。数学で「球体を作れ」という宿題が出たという。「そんなのどうやって作ればいいんだろう」と相談を受けたので、ちょっと思うところがあって、正20面体と、切頂20面体の模型を作って送ってあげた。

 しかし今思うに、あれは球体というよりも球体に近い「多面体」である。出題は「球体を作れ」であって、これに合致した答えになっていない。あれは当時どう評価されたんだろう。気になってしまって、そのことをいきなりだがIA子に聞いてみた。(ちなみに最近はメールではなくLINE)

 すると「明日娘に会うから聞いてみる」という返事。なんとU子ちゃんの結婚式を翌日に控えていたらしい。コロナのご時世だから、ガーデンパーティー形式でやったそうだ。写真や動画を送ってくれた。親戚の小さな男の子が乾杯の音頭をとるときの挨拶は、大人顔負けのスピーチでかわいいやら感心するやら。ちなみにU子ちゃんには、中学生の頃に一回だけ会ったことがあったがすっかり大人になっていた。(そりゃそうだよね。笑)

 さて、あの多面体の評価は「はっきりした評価はよく覚えていないけれど、教室にずっと飾られていたので良いものだと思っていた」とのことだった。どうやらネガティブな思い出はないらしく、安心した。

 一つ前の記事で、ドーム形の紙工作をやったが、このときにU子ちゃんのこの宿題のいきさつを思い出し、正20面体と切頂20面体をまた作りたくなってしまった。どうもボール紙で立体を作る作業ってのは、快感やら充実感がそこそこあってクセになる。

 まず正20面体。
01.jpg
03.jpg

次に切頂20面体。
02.jpg
04.jpg

 正20面体と切頂20面体は一見全然違う形に見えるが、実は関係がある。正20面体の頂点のとんがりを下の写真のような線に沿ってスパッと削ぎ落とすと、そこに5角形が現れ、切頂20面体になる。「頂点を切った20面体」ということで、切頂20面体。(これ、あんまり知られていないような気がするので、ちょっと書いてみた)
05.jpg

 ちなみに切頂20面体は、元々あった20個の正三角形が正六角形に変わってそのまま20面、それに加えて正五角形が12面増えるので、面の数は全部で32になる。

 球体に近い多面体を考えているときに、正○面体という名前のつくもので一番球に近いのが正20面体である。そして、これを見ていると「角を落としたらもうちょっと球に近づくんじゃないかな・・・」と、誰でも考えるのではないだろうか。実際、切頂20面体はよく転がる。この形を、皮を縫い合わせて作り、中にチューブを入れて空気を入れてパンパンに張ればサッカーボールになる。

 当時、「球体を作れ」という課題を聞いたときに、このサッカーボールの形状の由来から、正20面体と切頂20面体でいいか、と安易に考えてしまったのだ。今、改めて球体を作れと言われたら、もうちょっと違うものを作ると思う。でも今はやめておく。後の楽しみにとっておこう。

(おわり)

***
(注1)この記事を新規投稿したときは20歳と書いたのだが、記事を読んだIA子から連絡が来て、結婚したのは23歳、U子ちゃんを生んだのは24歳のときだった、とのこと。記憶のズレがあった。つまりU子ちゃんの年齢は、僕の勤続年数と同じということになる。
 この年月は人間の年齢として考えると「まだまだ若い」って思うが、勤続年数として考えると定年間際だ。いろんな意味でズッシリと「重さ」を感じる。


nice!(1)  コメント(1) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

紙で作る多面体その1 [数学]

 今年2021年の2月、お袋がバレンタインデーにチョコレートを送ってくれた。毎年必ず送ってくれるのだが、最近、昨年だか一昨年、来なかったので、心配して電話したら、うっかり忘れていたんだそうだ。だから、チョコレートをもらえる喜びよりも、お袋の頭がまだそこそこ働いていることに安堵する。

 ちょっと高級そうな、一口チョコの詰め合わせが入っていた。その中に一つ、目を引くものがあった。
01.JPG
04.JPG

 ダイヤモンドとかミラーボールを思わせるような、どこかで見たような形である。食べる前に写真を撮っておいた。模型を作りたくなったのである。

 しかし、なんだか、わかるような、わからないような・・・。どうなってるんだ、この形は・・・。で、つい出来心で、ネット検索してしまったのだが、この種のドーム形は、分割の仕方によって、どんな形でも作れることがわかってしまい、まあ、そりゃそうか、と納得して、それ以上は見なかった。とにかく今回は、このチョコレートの形の正体を突き止めたいわけで、まじまじと見ていたら、これは、2段階に分けて考えるとよさそうだと気づいた。

■第1ステップ
地球儀の北半球を多面体で近似することを考える。そのとき、赤道を8分割して作る場合と、16分割して作る場合を両方作ってみる。

まずは8分割。
05.JPG
06.JPG

次に16分割。
07.JPG
08.JPG

 これを見ると、16分割の方は北極の方が細かすぎて作りにくく、8分割の方は赤道付近が粗すぎて球体からかけ離れていることがわかる。そこで北極付近は8分割、赤道付近は16分割という折衷を作ることを思いつく。


■第2ステップ
16分割の方に、写真の通り、青い線を引いてみる。
09a.jpg

 この線に沿って、出っ張りを削ぎ落とすと、それがつまり、あのチョコレートの形になる。ということで作ってみたのがこれ。
10.JPG
11.JPG

 面白いじゃないか。プラモが完成したような満足感を味わってしまい、自分の作ったものにしばし見とれてしまった。綺麗な形だ。きっとダイヤモンドのカットの形状なんかも、いかに美しくカットするか、昔からずっと研究されているのだろうと想像する。

(つづく)
nice!(1)  コメント(1) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。