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僕が天文少年だった頃(4) [天文]

【天文年鑑】 ~惑星の話~

 小学校6年生で天文に目覚めて以来、本屋さんに行くと天文関連の本を立ち読みするのが楽しみになった。書店で知った「天文年鑑」は誠文堂新光社という出版社から出ている雑誌である。年に一回発行されるもので、その年に起こる天文現象が一覧できるようになっている。小学校6年生のときに当時の1975年版を買ってもらった。いろいろな情報が載っているが、僕の場合、参照していたのは、「毎月の空」のページだった。このページで惑星の位置を確認していたのである。
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 何月何日の何時に、何座が空のどの位置に見えるかというのは、星座早見盤を一つ持っていれば用が足りる。なぜかというと恒星は天球上に固定されていて、その位置は地球の自転と公転だけで決定するからである。そういう意味では非常にわかりやすい。しかし天文現象のすべてがそのように単純に推移するわけではない。惑星の運行はその一例である。

 惑星はそれぞれの軌道上でそれぞれの周期で公転しており、そういう意味では規則正しい運動をしているのだが、天球上のどこに見えるかというと相当複雑になる。惑星は地球を含めて、同じ太陽系内の中の狭い範囲をそれぞれがマイペースで動いているからであり、地球からみるとあっちに見えたりこっちに見えたりするのである。

 つまり恒星と違って、惑星は天球上をさまようような動きをする。そもそも、この性質が「惑う星」つまり惑星という名の由来になっている。だから惑星の位置を知りたければ天文台が発表する情報が必要になる。雑誌はそういった情報を読者に提供してくれるのであり、その一つが天文年鑑だった。

 下の写真は、古本屋で買った天文年鑑1975年版の「12月の空」のページである。(小学生の頃に使っていた本はもう手元にはなかった)見開きの右のページに20時~21時頃の空の様子が載っている。この時期は、かに座に土星が、おうし座に火星が、うお座に木星がいることがわかる。
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 左のページには、水星、金星、火星、木星、土星、天王星、海王星の情報が載っている。細かい話をするとキリがないが、ここで特に強調したいのは水星、金星、火星、木星、土星、明るさについてである。

 星の明るさで1等星とか2等星とか言えば、都会の空が明るい場所でも、比較的見えやすい明るい星である。例えば今の季節(冬)でいうなら、オリオン座の特徴あるあの鼓(つづみ)のような形を作っているのは、みんな1~2等星である。

 この情報によれば金星~土星は軒並み1等星よりも明るいことがわかる。つまり出ているときは非常に見つけやすいので、だいたいこの辺にあるということが分かっていれば、望遠鏡を向けることは比較的容易だった。あの簡易的な望遠鏡でもなんとか見ることができたのはそういうわけだった。

 それともう一つ。昔の人が恒星とは明らかに違う惑星の運行に興味を示したのは、これらが明るい星だからである。もしも暗い目立たない星がこのような動きをしていたとしても気づかれないままであったに違いない。宇宙の構造がわかっていなかった昔(天動説の時代)の人が、このような規則性の解明できないものに着目して、占星術を考えて、人間の運命と結びつけようとしたのは理解できる。

 ただ、黄道12星座の中を太陽が動いていく様子は非常に規則的で、毎年同じである。現在日本で行われている占星術は、この現象をベースにしているようだが、毎年同じものを見て占うと運勢は毎年同じになってしまうだろう。つまり占いが成立しない。しかし、民放の朝のニュースでは毎日毎日、「○○座の人の今日の運勢」が発表される。○○座というだけで、運勢がわかるのだろうか。一体何を見て占っているのだろう。これを占っている人に会ったら聞いてみたいものである。

 ちなみに僕は天文ファンであるが、占星術を否定するつもりはない。こういうものを否定すると、神社でおみくじを引くのも否定しなければならなくなる。占いは庶民の楽しみであり、占い師はエンターテイナーであって、科学と比較するようなものではない。もしも占いのせいで身上を潰す人が続出し、それが社会問題になったとしたら、それは占い師のせいというよりも、むしろ教育に問題があると見た方がよいと思う。

(つづく)

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僕が天文少年だった頃(3) [天文]

【宇宙と星の不思議(小学館)】 ~星座の話~

 小学校6年生の頃、親に買ってもらった子供向けの天文書があった。「宇宙と星のふしぎ」(小学館)である。何度も読み返したのでボロボロになってしまい手元には残っていなかったが、古書で探すことができた。これもなかなかの良書だったと思う。
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 「太陽が無くなったら地球はどうなりますか」、とか、「夏は暑く冬は寒いのはなぜですか」などの素朴な疑問をイラスト付きでひとつひとつ解説するコーナーから始まって、星座の解説、天体観測の仕方など、天文少年が喜びそうな内容をたくさん集めてある。この本の中で特に好きだったのは星座の解説だった。

 そもそも星座というのは、天球をいくつかの領域に区分し、それぞれの領域に名前を付けたものである。現在世界的に通用している星座は88個あるが、もともとは、ギリシャの天文学者プトレマイオスが整理した48の星座からスタートしている。ギリシャだけあって48の星座にはギリシャ神話が関連つけられていて非常に興味深い。この本の中でも神話がわかりやすく紹介されている。その中で最も印象的だったのは勇者ペルセウスの物語だった。

 話の詳細は省略するが、最近話題になった「タイタンの戦い」という3D映画はこの神話をモチーフにしたものであるし、また絵画や彫刻にも、この神話の登場人物を表現したものが昔からたくさんあるのだそうだ。この神話に登場する人物や動物はこの本の中では「秋の星座」という括りの中に入っている。

・ペルセウス・・・ 物語の主役でギリシャの勇者。(■ペルセウス座)
・メドゥーサ・・・ ペルセウスに退治された化け物。髪の毛の1本1本が蛇になっていて顔を見たものは恐ろしさのあまり石になってしまうという。ペルセウスはこれを退治して切り落とした頭部を、武器として袋に入れた。メドゥーサは星座になっていないが、ペルセウス座のアルゴルという星はペルセウスの持ったメドゥーサの首の部分ということになっている。
・カシオペア・・・古代エチオピアの女王。美貌を自慢して海神ポセイドンの怒りにふれ、娘のアンドロメダを海の化け物へ生贄としてささげることになった。(■カシオペア座)
・アンドロメダ・・・カシオペアの娘 (■アンドロメダ座)
・海の化け物・・・アンドロメダを食べようとしたところ、ペルセウスが現れ、もっていたメドゥーサの首を袋から取り出して見せられ石になってしまう。(■くじら座)
・ペガスス・・・ペルセウスの乗る天馬。殺されたメドゥーサの血の中から生まれた。(■ぺガスス座)

 秋は空が澄み、星が見やすくなる季節である。神話を知っていると星座を見るのが一層楽しくなる。この本の秋の星座の部分のページを写真に撮って載せる。
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 ところでアンドロメダ座と言えば、あの有名なアンドロメダ大星雲(M31)である。あの星雲をなんとかして見たかった。場所は本に載っており、しかも空のそのあたりに、モヤッとしたものがなんとなく見える。でも、どうしても天体望遠鏡の視野には入ってくれなかった。このことは、成し遂げられなかった「青春の忘れもの」として僕の心の中にまだ小さく燻っている。

 なぜ見られなかったのか。原因はわかっている。

1)天体の明るさの問題
 M31の明るさは4.8等級。肉眼で見られる限界の等級は6等級までと言われているが、空のよほど暗い場所でそうだということであり、僕の目は4.8等級の明るさが見られるほど良くはなかった。見えないものを「だいたいこの辺りだ」とヤマ勘で望遠鏡を向けるしかなかった。

2)望遠鏡の架台の問題
 すでに書いた通り、僕の望遠鏡の経緯台は安物で微動装置がついていなかった。その状況で目に見えない天体を視野に入れようとしているのだから、この時点でもう絶望的である。

3)天体のサイズの問題
 僕の望遠鏡には、接眼レンズが2つ付属していた。視野の広い方で39倍の倍率が得られ、この状態で満月が視野に一杯になる。月の視直径は30’である。これに対してM31のサイズは160’×35’。つまり視野の広い方の接眼レンズを使っても、望遠鏡の視野に収まらないのである。しかし当時はそのことを知らなかった。視野の問題なら倍率を下げれば解決する。つまりもっと焦点距離の長い接眼レンズを買えばよいことになるが、それがわかっていたとしても買うお金はなかった。

 M31は、一度でいいから、自力で見てみたいと思う。

***
【余談】
 この本のイラストのアンドロメダ姫は、みんな裸である。特にカシオペア座のページのイラストはシースルーで「下」が見えている。あの永井豪の「ハレンチ学園」だって「下」は隠してたぞ。小学校6年生の僕にとっては、鼻血が出そうなイラストだった。(笑)
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僕が天文少年だった頃(2) [天文]

【科学のアルバム】(あかね書房)

 2011年4月に「ラジオにまつわる思い出話(1)」という記事を書き、その中で、僕が小学校6年生のとき、教室が図書室だったことを書いた。(注1) いつでも好きなだけ本が読めるという恵まれた環境にいて、僕が最も興味を持ったのはラジオと天文だった。

(注1)興味のある方は下記の記事を参照されたし。
ラジオにまつわる思い出話(1)
http://shonankit.blog.so-net.ne.jp/2011-04-09

 この図書室(=教室)に、シリーズものの科学図鑑があった。あかね書房の「科学のアルバム」というもので、動物、植物、昆虫、天文、気象など、様々なタイトルがあり、それぞれの専門家が執筆していた。あかね書房のWEBサイトで調べたところ、このシリーズは現在でも発行されている。天文関係で一番古いのは「月をみよう」というタイトルの本で、1970年が初版らしい。

 ネットの古書店で検索したら、このシリーズで天文学・地学を集めた20冊セットが6000円で売っていたので買ってみた。
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 送られてきた本を見てびっくり。補充カードが入っている。いわゆる新古というやつらしい。いい買い物をした。

 中を眺めてみて思った。やっぱりいい本だ。子供用ではあるが、大人が見ても十分楽しめる。「科学のアルバム」という名前の通り、写真が豊富であり、解説は簡潔明瞭だ。この図鑑は子供たちが科学に興味をもつのに大きな役割を果たしてきたのではないだろうか。(かく言う僕がそうなのだから) 初版から40年以上経った今でも版を重ねているのは良書の証である。そんな本は滅多にないだろう。ひとつ選んで中をちらっと紹介してみよう。
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 特にこの「星の大きさ比べ」のところは覚えている。オリオン座のベテルギウスの直径は太陽の500倍もあるということは、太陽を直径1㎝の円だとしたらベテルギウスは直径5mの円だということになる。しかも太陽の直径は地球の109倍である。星というものの途方もない大きさに、当時は心の底から驚嘆したものだった。このシリーズ図鑑は全部がこんな感じで、感動の連続だった。

 ちなみに、このシリーズの天文関係の本のほとんどは、藤井旭さんが執筆したものである。この人は日本のアマチュア天文家のカリスマのような人で、以来、この人の本にはずいぶんとお世話になった。藤井さんは今でも現役で活躍されている。

***
 たまたま、この頃、小学校の理科で天文の授業があったが、暇さえあればこの科学のアルバムシリーズを始め、図書館にあった天文関係の本を眺めていたので、初歩的なレベルの知識はかなり持っていて、テストの成績はよかった。ただし一つだけ×を食らったことがある。こんな問題だった。「地球は( )軸を中心に自転をしており、その軸は北極星の方向を向いている」 ( )の中に入る言葉は何か。 

 地球の自転する軸を地軸という。だから、括弧の中に”地”という字を入れるのが正解になる。これに対して、僕は“自転”軸と答えた。なぜかというと、自転している星は何も地球だけではなく、惑星だろうが太陽だろうがみんな自転している。例えば「天王星の自転軸は98°傾いている」なんていう記述が図鑑に書いてある。ネットで“自転“という項目を検索すれば自転軸という言葉が一般的に使われていることがわかる。つまり僕は地球限定の言葉ではなく、天体一般に使われている言葉の方を回答したのだった。

 これを間違いと言われ、天文学者志望だった僕としては看過するわけにはいかず、担任の先生に異議を申し立てたが却下された。それまではずっと、先生というのは何でも知っているすごい人だと思っていたのに、このときは先生というものに対して非常に失望した。悔しいやらアホらしいやら情けないやらで、何度も思い出したので、僕の記憶に強烈に残っている。

 まあ、先生とて普通の人である。天文学を専攻したわけでもないし、普段から天文書を熱心に読んでいるわけではない。あくまでも普通の人が先生になっているのである。だから天文学用語など知らないのは当然なのだ。お上の決めた指導要領に忠実に従って教えているだけだから、地軸はあくまでも地軸であり、自転軸などという言葉は、この人の頭の中の辞書にはなかったのだと思う。

 また別の角度から考えると、小学生も高学年になればある程度のレベルの本を読めるようになるし、何かに興味をもったときののめり込み方とか、知識の吸収の仕方は物凄いものがある。一部の知識が肥大化して普通の大人を凌駕してしまうことは珍しいことではない。当時の僕がそうだったと思う。いわゆる「イヤなガキ」である。(笑)

 先生が僕のクレームに取り合わなかったのは「イヤなガキ対策」だったのかも知れない。またテストには出題意図というものがあり、求められている答えがある。それに合わない答えを書けば、たとえ学術的に正しくても、事務的に間違いにされてしまうことがある。この事件では、そんなことを学んだ。

(つづく)

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僕が天文少年だった頃(1) [天文]

【天体望遠鏡の話】

 以前ちょっとだけ書いたことがあったが、僕はかつて天文少年だった。宇宙に思いを馳せ、夜空の星を見上げるのが大好きだった。当時ハマったのには、もちろんきっかけがあったし、今回これをネタにしようと思い立ったのにも訳があるのだが、それらについては追って書いていこうと思っている。今回は手始めに、天体望遠鏡のレストアの話である。

***
 小学校6年生のとき(1975年)に、親にせがんで買ってもらった天体望遠鏡。初心者向けモデルで、値段は21000円だった。今は量産技術が進んでいるせいなのか、海外生産のせいなのか、よくはわからないが、同じクラスの望遠鏡が同じくらいの値段で買えるようだ。ただ、当時の値段としては安い買い物ではなかったと思う。そもそも狭くて物を置く場所もあまりない家だったのに、よく買ってくれたものだと思う。親とはありがたいものだ。

 さて、この望遠鏡で天文少年ひぐらしは何を観たか。印象の強かったものを挙げてみる。
1)月
 やっぱり天体望遠鏡を買ったら、誰でも最初に月に向けるだろう。クレーターを初めて見たときは感動した。
2)太陽
 望遠鏡で太陽を直接覗けば目を傷めてしまうが、接眼レンズに専用のフィルターをつけると観られるようになる。表面の黒点がちゃんと見え、しかも毎日観察すると黒点が移動していくので、太陽が自転していることが確認できる。
3)金星
 「明けの明星」を見るか、「宵の明星」を見るか、どちらかしかないが、早起きは苦手だったから後者のみ。まあどちらも金星であることに変わりはない。内惑星だから月のように満ち欠けがあり、望遠鏡ではこれがはっきり確認できる。
4)火星
 大接近のときに望遠鏡を向けてみた。しかし残念ながら、模様らしきものは見えなかった。その残念さをよく覚えている。
5)木星
 赤道付近にかすかに縞模様が見える。ガリレオが発見した4つの衛星もよく見えた。
6)土星
 輪がはっきり見えた。(これは感動したよ~~)
7)アルビレオ
 はくちょう座のくちばしのところにある二重星。肉眼でみると一つの星だが、望遠鏡でみると青とオレンジの二つの星に分かれて見える。綺麗だった。
8)プレアデス星団
 いわゆる昴(すばる)というもので、おうし座にある散開星団。肉眼でもモヤッと見えるが望遠鏡を向けると星がギッシリ集まっている。実に美しい。

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 これらの他にもいろいろと望遠鏡を向けてみたが、あまり印象に残っていないということは、よく見えなかったということである。これは望遠鏡の視野の問題もあるし、微動装置がなくて(操作性が悪く)視野に入れられなかったというのもある。つまりは機材が貧弱だったということになるが、この望遠鏡で、かつ、あの頃の知識と技術で、楽しめるだけ楽しんだと自分では思っている。

 他に見たいものはたくさんあったし、天体写真を撮ってみたいと思ったりもしたが、それは無理だった。こういう趣味をやる場合、小学生、中学生には経済力の壁が大きく立ちはだかるのである。星空の観望は、機材が無くても楽しむ方法はある。しかし、そのうちに僕自身の興味が他の方向に移ってしまったのだった。

 この望遠鏡は実家の、僕がかつて使っていた2階の部屋にずっと置きっぱなしで埃をかぶっていたが、今年は気分が盛り上がっていたので自宅に持って帰ってきた。

掃除のために分解。レンズの埃掃除、鏡筒の塗装などをした。
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レストア完了。全体像。
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ちょっと拡大。
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銘板。
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 モノは「カートン光学」製6センチ屈折経緯台である。(このメーカーはすでに天体望遠鏡からは撤退してしまったようだが会社は存続している)試しに月を見てみたが、ちゃんとクレーターまで見えたから、昔の性能は維持しているかも。ただ、やはり微動装置がついていないというのは非常に不便だし、クランプすると視野がずれるなんていう欠陥もある。要するに架台が貧弱なために、光学系の性能を十分に発揮できないのである。(天体望遠鏡をこれから買おうという人には、架台の貧弱なものは買わないように助言してあげたい)

 この望遠鏡をベースにして、架台を自作してグレードアップしてみるのも面白いな、と思ったが、よく考えたら昔もこれと同じことをずっと考えていたのだった。昔と違って今はできる環境がある。だったらやらなきゃ。

(今までの人生でやり残したことを、死ぬまでにどれだけできるのだろうと最近いつも考えている)

(つづく)
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