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メロディー電卓 ML-71 [雑文]

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 僕が大学時代(1985年頃)に愛用していたCASIOのML-71という電卓があった。カードサイズで、時計機能、アラーム機能、タイマー機能がついている。普段は、時計になっていて、カバーを閉じた状態でも時刻を確認できるようにカバーに窓がついている。

 しかも、数字のボタンに音が割り付けられていて押すと音が鳴り、簡単な音楽を演奏できる。この時代、電卓戦争が一段落してゲームウオッチなんてものが流行ったりして、電卓も遊びの要素が付加された時代だった。任天堂がファミリーコンピューターを出したのは1983年だったそうな。

 さて大学時代、叔父がたまたますぐ隣に住んでいた。子供が3人いて、一番上の子が、僕と11歳年が離れていた。当時の僕にとっては、可愛くも何ともないうるさいガキである。このガキどもが日曜日になると、僕の部屋にずかずかと入り込んでいろいろなものをいじり回すのが常になっていた。さほど子供受けするような面白いものがあるわけでもないから大した被害には合わなかったが、たまたまこの電卓が見つかってしまい、奴らのオモチャになってしまった。

 アラームの音が、メンデルスゾーンの「春の歌」。タイマーの音が、シューベルトの「楽興の時」になっている。本来なら、アラーム、タイマーそれぞれを使ったときに、これが自動演奏されるのだが、「アラーム」というボタン、「タイマー」というボタンを単に押しただけでも、この曲が流れるようになっている。

 困ったことに、ガキどもがこの機能を学習してしまった。僕の部屋にくるたびに、やたらこのボタンを押すのである。押すと機械がいちいちそれに反応するのが面白いのだろう。飽きることもなく何度も何度も押す。そのたびに同じメロディーが流れる。「うるせえからもうやめろ」と言っても聞かないので閉口した。

 その後、この電卓がどうなったかは記憶がない。結構乱暴に使った(つまり愛用した)ので、たぶん壊れて廃棄したと思う。その後、長いこと忘れていたが、つい最近これと全く同じものがヤフオクに出品されているのを偶然見つけてしまった。新品同様で3800円。これも何かの縁だ。思い出もあったし愛着もあったので、この値段なら惜しくはないと思い、すぐに落札した。

 さてさて。送られてきたものを起動しようとして説明書を読んだときに、ちょっと驚く発見があった。僕は、この時代(1980年代)の機器には、2000年問題があるはずだと思っていて、そこはもう仕方ないと諦めていたのだが、そうではなかった。取説の仕様の欄の、カレンダーのところに「1901~2099年」と書かれている。今年は2021年だ。まだ普通に使えるどころか、あと78年も使える。電卓よりも先に僕がくたばるだろう。これは嬉しい発見だった。(冒頭の写真、21 04 25という表示になっている)

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 CASIOのこの電卓のLSIは、おそらくこの機種のために専用設計したものだろうと思う。しかもカレンダーの幅が200年もある。その条件で1985年に設計するなら「1999年で終わり」なんていう設計にするはずはない。エンジニアの心理として「そりゃそうか」とも思う。

 2000年問題というのは、構築したコンピュータシステムのカレンダー機能の「年」の部分が、メモリーの節約のために2桁で表されていたことによるものだった。つまり「99」という数字は1999年と認識するが、そこに1を足して「00」になったとき、2000年ではなくて、1900年と認識してしまうということだった。各所が念入りに点検をした結果、実際に年が明けてみたら、さほど大きなトラブルは無かったと記憶している。

 それにしても、その程度のメモリーを節約しなければならなかった時代というのは、よほど古い時代だと思う。逆に考えれば、そんな時代(世紀末を現実問題として意識できない時代)からコンピュータが運用されていたわけだから、それはそれですごいことだと思う。

 懐かしい電卓をまた手に入れて、2000年問題などと言う懐かしい話を思い出し、昔の技術に思いを馳せた。やっぱりレトロ趣味は面白い。


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にしき堂「新・平家物語」 [雑文]

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 広島の和菓子メーカー、にしき堂の銘菓「新・平家物語」を取り寄せてしまった。なかなか凝った作りになっていて、感心してしまったので、紹介する。

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 バウムクーヘンのロールの真ん中に白小豆と赤小豆の餡がそれぞれ入っている。これは源氏の白、平家の赤を表現しているそうで、これを一個ずつペアで包むことで平和を表現しているのだそうだ。

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 ちなみに味は、バウムクーヘンとあんこの味で、そのまま容易に想像できる味なんだが、いい素材を使っているようで、すごく高級な味がする。僕の馬鹿舌でもそれはわかる。

一緒に買ったもみじ饅頭は、庶民的な味で、ペロリと平らげてしまったが、平家の方はなんか貴重品のような気がして、もったいなくてなかなか食べられない。

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コンプレッサ用の台 [雑文]

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 写真の黄色いコンプレッサは、1991年に僕がイラストを習っていたとき、絵の具を吹き付けるためのエアブラシに使っていたもので、その後、プラモデルの塗装用になって現在に至っている。(もっとも最近は、プラモの方がご無沙汰になっているが)

 さて最近、新型コロナウイルス対策で、3月の中旬から会社が在宅勤務になり、通勤時間がそっくりそのまま無くなってしまった。そのぶん家にいる時間が増えたことになるので、それまで手をつけられなかったことをいろいろとやっている。

 その一つが今回の、コンプレッサの台。上の写真はコンプレッサをその台に乗せたもの。なぜこんなものを作ったかというと、一言で言うと、使いにくかったから。(注1)

 アルミフレームをモノタロウで切り売りしてくれるので、これをつかった。サイズ(太さ)は20mm角。

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 裏板は3mm厚のアルミ板。これを皿ねじの埋め込みで固定した。
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 スイッチブラケットも金属で手作り。
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 電源配線部分。
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 スイッチ部分。
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 やっとこれで整理がつく。あとは底面に防振のスポンジをつけて出来上がり。

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(注1)扱いにくい理由

1)往復動のコンプレッサなので運転中に振動する。
 床に直接置いて使うと、
  ・床に振動が伝わって騒音がでる。
  ・振動で、少しずつ床を移動する。
この二つを避けるため、使うときは、いつも座布団を敷いて、その上に載せて使っていた。

2)収納しにくい。
 重量物(約10kg)なので、段ボール箱に入れても、重みで箱が壊れてしまう。

3)モーターから出ているケーブルがやたら太い。300W程度のものなのに、直径φ8.5mmもあるキャブタイヤケーブルだった。(なんでこんなケーブルを使っているのか不思議)太いケーブルは変形しにくいので、扱いにくい。

4)電源スイッチが無かったので、外部にフットスイッチをつけていたが、これも使いやすいとは言えなかった。スイッチは手元にあって片手で操作できるものがよい。



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1975年プロ野球ファン手帳 [雑文]

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 僕が小学校6年生のとき、1975年の話である。従姉のCちゃんに野球観戦につれて行ってもらった。その日、お袋がわざわざ小学校の教室まで迎えにきて、早退したのを覚えている。野球を観に行くから早退とは言えなかったので、もっともらしい理由をつけるために、お袋が芝居をしたのだった。千葉県市原市から、水道橋の後楽園球場(現在の東京ドーム)までは、電車で2時間以上かかるから、試合開始から観戦するために、そうしたのだろう。

 Cちゃんは、僕より6つ年上なので、当時高校3年生、大洋ホエールズのファンだった。彼女は昔から、あまり人付き合いをしない性格の人なので、野球観戦も、普段は一人で行っていたのだと思う。僕は巨人ファンだったのだが、実は、さほど熱心に見ていたわけでもない。ただ王さんの一本足打法は大好きだった。ねじりのエネルギーをため込んで一気に放出するようなあの動きにはしびれた。ホームランを打ったときももちろんだったが、空振りしたときでさえかっこよかった。

 どういうわけで、Cちゃんが僕を連れていってくれたのか。いきさつは、よく覚えていない。でも想像するに、親戚が集まったときになんとなく、伯母さん(Cちゃんのお母さん)あたりが、「Cが大洋の○○選手に夢中になっていて、しょっちゅう一人で野球を観に行っているのよ」なんていう話がでて、それを聞いた僕が「いいな~」と羨ましがって、伯母さんが「じゃあCに連れて行ってもらいなさい」などと話が進んだのではないか。そんな気がする。

 これも想像なのだが、球場について、Cちゃんは、試合開始前に、僕になんやかんやと世話を焼いて、飲み物とか食べ物とかいろいろ買ってくれたのだと思う。そのときにCちゃんが僕に「ファン手帳買う?」と聞いたのだった。僕は「いや、いいよ」と断った。理由は、ファン手帳なるものがどんなものなのかもわからなかったし、あまりいろいろと面倒を見てくれるので、ちょっと恐縮してしまっていたのだと思う。

 試合は、残念ながら、僕の大好きな王さんは、怪我のために休場していた。どんな試合だったのかも思い出せない。でも、なぜかずっと記憶に残ったのは、「ファン手帳買う?」というCちゃんのあの言葉だった。ときおり思い出しては、「あのときのファン手帳というのがどういうものだったのだろう」と気になっていた。ただし、だからといってそれをわざわざ調べるほどのことでもなかった。そもそも調べようにも調べる術が無かった。

 それから44年の歳月が過ぎた。世の中は便利になり、インターネットが発達し、オークションサイトなんてものが出来、昔懐かしいものが容易に入手できるようになった。ある日ふと、このファン手帳のことを思い出し、ヤフオクで検索してみたところ、1975年のファン手帳が出品されていた。当時の値段で100円だったが、「4000円即決」で出品されていた。1週間ほどじっくりと、他の出品を比較したりなどして考えた。そしてとうとう落札してしまった。44年前のものにも関わらず保存状態が非常に良く、4000円という価格にもまあ納得した。

 さて、これがどんなものだったのか。一言で言うなら、これはデータ集だった。昨シーズンの成績(バッターなら打率とか打点とか、ピッチャーなら完投数とか勝率とか)や、各選手の出身校とか生年月日とか身長体重とか。そんなことがびっしり書いてある。現実問題として、これを当時、小学校6年生のときに買ってもらったところで、猫に小判だったと思う。しかし、今、この歳になって見てみると、いろいろと発見があって面白い。

 まず、表紙、背表紙に、巨人の長嶋監督(当時)、ロッテの金田監督(当時)の写真がある。
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 中のページには、知る人ぞ知る選手達の写真がたくさん写っている。そういえば、ここ2~3年で、往年の名選手が結構、亡くなったな、と思い出し、ネットで調べてみたが、ざっと下記の通りだった。
星野仙一 2018年1月4日逝去
衣笠祥雄 2018年4月23日逝去
金田正一 2019年10月6日逝去
野村克也 2020年2月11日逝去

 僕と同年代の諸兄にとっては、さぞかし懐かしい写真だろうと思うので、いくつかページを見繕って載せておこうと思う。
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 まあとにかく、これで、またひとつ、青春の忘れ物を取り戻した。

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勉強道具 [雑文]

 2020年が明けて1月、「今年は勉強をしっかりやろう」と心に決めた。なんだか中学生や高校生にありがちな、ありふれた目標だけど、そうではない。社会に出て30年を過ぎたおっさんである。そう考えると、わりと立派な目標ではないだろうか。

 「何を勉強するのか」と言われたら、そりゃあいろいろあるのだが、簡単に言えばいくつか資格試験にチャレンジしたいのだ。で、その中に法規を勉強しないといけないものがある。法規ってのは、自然現象と違って人間の決めたものだ。つべこべ言わずに丸覚えをしなければならない。こういうところは自然科学とだいぶ違う。(自然現象なら自然法則に従うから、覚えることはそんなにない。原理原則を知ったらあとは、自分の頭で考えていれば答えはでる。いや出ない場合もあるけど)

 昔から、暗記物の科目は苦手だった。でも、そういうのが得意な人というのは友人の中に確かにいた。僕はこういう人達を見るにつけ、「よくもまあこんなにたくさん記憶できるもんだ」と尊敬していたが、彼らが何をしていたかを想像するに、例えば英単語を覚えるための単語カードを作って、何度も何度もめくって反復記憶するような泥臭い努力を、結局はしていたんじゃないかと思う。

 野球選手が何度も何度も、バットを振ったりゴロを拾ったり、キャッチボールをしたり、地味な努力を延々と繰り返すのと同じなのだ。今更何を、なんて思われるかも知れない。でも自分はそういう努力を今まで怠ってきたと、本当に思う。記憶するための努力が嫌いだったのだ。それを今年は見直したい。

 さて、そんな泥臭い努力をどうやってやるか。それにはやっぱり単語帳モドキを作ろう。でも紙で作るよりも、こんなITの進んだ現代だから、現代的にPCを使ってやろう。どこの職場でも広く普及しているMicrosoftのExcelという表計算ソフトがある。これのマクロコマンド機能(注1)を使って、単語帳みたいな学習ツールを作ろうと思い立った。

 1月の中旬から、友人のN添さんに教わりながら、四苦八苦して約1ヶ月。ようやく原形ができた。

まずはこちら。
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 百人一首の暗記をモデルにしているが、何を覚えるのにもつかえる。問題をたくさん用意しておいて、それを表に記入しておく。問題をシャッフルしてランダムに10題出題。自分で答えて、ボタンを押すと答え合わせができる。フィールドを分けておいて、部分的に覆い隠すことができるから、これを応用していろいろと暗記に使える。

もう一つは図を使ったもの。

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 こちらは絵を見せてこれは何か、これは誰か、を答えるもの。言葉だけで表現できない問題も、これなら勉強できる。

さあ、道具は揃った。しっかり勉強するぞ。

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(注1)マクロコマンド・・・Excelの表を操作するコマンドの集合体。VBA(Visual Basic for Application)という高級言語を使って記述する。

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万能工作機の話(2)電源改良 [雑文]

 emco の万能工作機「unimat 1」の話の続き。製品のコンセプトは非常に気に入っているのだが、実用性に乏しいので改良したいという話を、少し前の記事に書いた。

(参考URL)
https://shonankit.blog.ss-blog.jp/2019-09-28

 それでまず「主軸の回転数が速すぎる」という問題点があって、一番にこれを何とかしないと怖くて使えない。最初に思いついたのはギアで減速したモーターに付け替えることだったが、それを検討している最中、自宅でちょっとした掘り出し物があった。

 市販のACアダプターで電圧の切り替えスイッチの付いた物である。自分がいつか買ったものであることだけは覚えている。しかし、いつ何のために買ったものなのか、思い出せない。でもまあ、とにかく使えそうではないか。(だんだんボケが進んでいるのだろうかと、自分で心配になるが、それはそれとして)
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 もともと、この工作機についていたのがDC12Vモーターである。これに対して発掘したACアダプターは3V、4.5V、6V、7.5V、9V、12Vという6段階に電圧を切り替えられる優れもの。つないで回してみたら、電圧に応じてそれなりに減速しているようだ。

 そんなわけで、安全スイッチもつけて、操作性を良くしたユーザーインターフェースを作ってみた。回路は目新しいものではない。
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 なお、配線はこんな感じ。
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 動作中の動画は下記を参照。


 電源を入れると、まず電源ランプの緑のLEDが点灯する。このマークは、まだモーターに通電していないことも併せて表示している。起動スイッチを押すと、赤のLEDが点灯して、モーターに通電中であることを表示する。停止ボタンを押すと、モーターが停止して、緑のLEDが点灯する。

 このLEDのレイアウトが、取ってつけたような変な場所にあることにお気づきだと思う。最初に作ったとき、このLED表示は無かったのである。しかし、電源が入っているのか入っていないのか、つまり、「今どういう状態なのか」が明確にわからないと、操作ミスにつながる。

 実は、配線が終わって最初に試運転をしたときに、モーターのケーブルの接続を、通電状態でやらかしてしまい、モーターがいきなり最高回転数で回り出して冷や汗をかいた。モーターのケーブルの接続は一度してしまえば、あとは、ほとんどいじることはないはずだが、メンテのときに、これを外せばまた同じことが起こるかも知れない。

 そんなわけでLEDを後付けしたが、結果的にこの位置で良かった。何故かと言うと、高輝度形のLEDを使ったせいで、まともに見つめると光がちょっと眩しい。その光の近くに起動ボタンがあるので、眩しさのせいで、起動ボタンにちょっとした押しにくさが生まれている。押すときにボタンの位置を注視するためにひと呼吸おき、それから押す、といった動作になる。

 安全を考えれば起動ボタンは押しにくい方が良い。図らずも眩しいLEDがこの操作性に役立っている。なお停止ボタンはこの眩しさの影響を受けない。無造作にポンと叩けばモーターは簡単に停止する。

(まだまだ改良は続く)

***
おまけの写真。前の記事のダミー電極に半田付け用の穴を開けているところ。
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数学検定2級受験体験記 [雑文]

 先日10月27日(注1)、数学検定というのを受けてきた。英語検定に比べて、数学検定というのはあまりメジャーではないようで、知らない人も多い。だからちょっと受験体験記を語ってみる。

 一番上の級は1級で、レベルは大学程度と位置づけられている。そこから準1級(高校3年生程度)、2級(高校2年生程度)、準2級(高校1年生程度)と順次水準が下がっていき、この下に中学生程度の級があり、さらに小学生が受ける算数検定というのもある。今回僕が受けたのは、2級(高校2年生程度)である。1次試験として「計算技能検定」というのが60分、2次試験として「数理技能検定」というのが90分ある。

 問題の難易度としては、教科書の章末にのっている基礎問題くらいだと思う。つまり普段から真面目に勉強している現役高校生だったら普通にすらすら解けるような問題ばかりということである。ただ、やっぱり自分が高校生とか受験生だった頃(バリバリに訓練積んでいた頃)に比べれば、久しぶりだったし、普段やらないことになってしまっているので、ものすごいスリルを感じた。こういう慣れないこと、久しぶりなことを逆手にとった楽しみ方ってあるんだなあ、と変な感動をしてしまった。感触としては大体9割ほど取れたので、合格ラインに達した手応えはあった。11月14日、WEBで合格を知った。

***
 大学を卒業して会社に就職して、もう30年以上の歳月が流れたが、僕は今でも大学受験の夢を見る。試験の日がどんどん近づいてくるのに、数学の勉強が一向に進まずに焦っている夢である。その夢には高校時代に使っていた数研出版の問題集が必ず出てくる。その問題が全く解けない。そもそも問題の意味がわからない。これはヤバいと焦っているうちに目が覚める。そして自分が受験も大学も全部終わっていることを思い出し、ほっとする。

 自分の深層心理の中に刻み込まれた恐怖感とかストレスとか言ったものが、ときどき疼いてこんな悪夢を見るのかも知れない。さほど深刻なものではないのだが、学校を卒業して30年も経っているのにいまだにこういう夢を見るとなると、逆にだんだん興味が出てきてしまう。自分の心の中に、どんな恐怖心、緊張感があってこんな夢を見させるのだろうか。正体は一体何なのだろう。数学のテストを受けたら、それがわかるかも知れない。今回数学検定を受検した動機は、この謎解きである。

 試験を受けてみて、ひとつわかった。会社に入ってからも技術系の仕事をしていると微積分や線形代数に触れる機会は比較的ある。これは文献を調べているときにそういう記述に出会うからである。ところが、順列、組み合わせのような数え上げの問題とか、整数論なんかは、ほとんど縁がなくなる。しかもこの二つの分野は、学生時代に数学の中でも苦手な分野だったのだ。

 今回の検定のときも、この苦手分野が出題され、考えてはみたものの、ほとんど何も書けなかった。実際に試験会場で答案用紙に向かい、答えを書けずにじっと白紙の答案を睨んだまま、時間がどんどん過ぎていく。この緊張感は、実際に試験を受けてみないとわからない。ものすごいストレスだ。

 なんでまた好き好んでそんなストレスに自分をさらすのか、という人がいるかも知れない。それは遊園地のジェットコースターに乗る人の気持ちを想像すればわかるだろう。人間とは、自分を無用なストレスにさらすことで、逆に快感を得ようとする不思議な生き物なのだと思う。他の生き物だったらこんなことはあり得ない。

 その苦手分野の問題は幸いにして選択問題になっていたので、回答せずに済んだ。結果として、自分の感覚としては9割ほど取れたわけだが、これが選択になっていなかったら、そっくりそのまま白紙になっていたことになる。この苦手分野は自分の弱点であり、無防備な部分であり、ここを攻撃されたら為す術がない。この恐怖感が心理的なストレスになって、あのような悪夢を見るのでないだろうか。

 2級を受けたのだから今後はその先の級も受けたいと漠然と思っているが、そのためには、こういう苦手分野を克服しないといけないと思う。しかし、克服してしまうと、あの悪夢をみることがなくなるかもしれない。そうなると、それはそれで寂しいような気がする。謎が解けた今、そんな変な迷いが生じている。

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(注1) 於:明治大学 生田キャンパス 中央校舎



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上総鋏とOさん [雑文]

 うちのお袋は昭和10年(1935年)生まれで、今年84歳である。今でも地元(千葉県市原市)の中学校の同級生と仲良く付き合っている。少し前までは、一ヶ月に一回くらい、集まって食事会とかカラオケとかやっていたらしい。もっとも年齢が年齢だけに、一人二人と少しずつ鬼籍に入られて、そういうイベントもだんだん少なくなって来ているようだ。

 その同級生の中に、鋏をつくるOさんという鍛冶職人がいるという話を、前から聞かされていた。その人の鋏は、庭の剪定とか華道とかで使う、いわゆる植木鋏とかお花鋏とか言われるものらしい。うちのお袋も庭いじりが好きでその人の鋏をずっと愛用していた。

 最近、実家の台所が乱雑になっていたので、片付けてあげたところ、1本の小刀がでてきた。保存状態が悪く、台所の水気を帯びたところに放置されていたので、全体が真っ赤に錆びてしまっている。お袋は「それはOさんからもらったんだよ」と言っていた。

 デザインがなんとも言えず味わいがあるので、気に入ってしまった。そこでお袋からもらい受けて錆びを落とし、刃を研いで見たのが下の写真。ボロボロになっていたので切れるようになるまでにずいぶん身を減らしてしまったがなんとかものが切れるレベルになった。刃の部分には、鋼(ハガネ)が入っていて、ちゃんと刃文(はもん)(注1)が出ている。

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 さて、このOさんという人物、調べてみたところ、結構すごい人だということがわかった。この人の作る鋏は、上総鋏(かずさばさみ)というもので、昭和59年に千葉県の指定する「伝統的工芸品」に選ばれたのだそうだ。残念ながら後継者がいなくて、今はもう廃業してしまい、Oさんは娘さんの嫁ぎ先の近く(某県)で隠居しているそうである。この小刀は、(お袋のおぼろげな記憶では)伝統的工芸品に指定されたときに、同級生みんなにくれた記念品だったという。

 ネットで「上総鋏」「千葉県指定伝統的工芸品」というキーワードで検索するとOさんの名前はわかってしまうが、それだけの腕をもった名工だったということになる。後継者がいなくて失伝するというのは勿体ない。千葉県が伝統的工芸品に指定したというのは、こういう風にならないためではなかったのか・・・。嗚呼。残念。とは言うものの、科学技術が進歩して量産技術も発達してしまった。時代の流れによる不可抗力というのもあるのだろう。

 この小刀は緩やかに湾曲している。この曲がり具合は絶妙で、右手で握って刃を前に向けたとき、ちょうど刃が力の入る方向へ向くようになっている。実用本位のものだ。研ぎ上がりを一応お袋に見せたが、どうせお袋に返しても、またいい加減なところに置いてボロボロにしてしまうことが目に見えているので、僕の手元で保管することにした。

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(注1)刃文・・・「刃紋」とか「波紋」は刀剣用語としては誤記らしい。
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万能工作機の話(1)突っ切りバイト [雑文]

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 もうずいぶん前の話になる。通販のパンフレットの中に万能工作機があるのを見つけた。ブロック(ユニット)を組み合わせることで、旋盤になったりフライス盤になったりするという。これは面白そうだと思い、買ってみた。しかし実際に手元に届いたものは、残念ながらおもちゃみたいなもので、とても使えそうになかった。やがて使うのを諦めて、友人にあげてしまった。

 さて、模型だとかおもちゃのレストアと言った工作系の趣味をもっていると、工作機械が欲しいと思うことがよくある。例えばプラモデルの場合、出来の良いキットを組んでいるときは、なにも問題ない(そもそもプラモとはそうあるべきだ)が、運悪く出来の悪いキットに出会ってしまって、改造とか、新しい部品製作が必要になったときに、「工作機があれば・・・」と思うのである。

 HAWKⅢのプラモを作り始めてから、そんなことをよく考えていた。「工作機がないから」なんて言い訳がましいことを言いたくなかったのだが、こいつが一筋縄ではいかないキットであることは確かで、製作が停滞する理由のひとつとしてこれがあることは確かなのだ。だったら解決してみれば良いではないか。工作機があることで解決する問題ならば。

 ・・・と言うことで、昔買った工作機の話に戻る。最近ではこれと同じタイプの工作機がアマゾンで売られている。おそらく僕が買ったもののコピー品だと思う。案の定、評判はすこぶる悪い。でもユニットを組み替えるといろんなことができるという発想はユニークで、この点は大変気に入っている。先日その友人に連絡をとり、「もしも使っていなかったら返してもらえないか」と頼んでみたら快諾してくれた。その友人も使わないまま物置の中に長いことしまっていたらしい。

 無事に里帰りした工作機が上の写真である。名前は「ユニマット1」という。オーストリアの"emco"という、業界では名の知れた工作機械メーカーのブランドがついている。おもちゃメーカーではないこの会社が、こういうものを作るということは、何かの企画ものなのかも知れない。

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 「このままでは使えない」という事実は変わっていない。理由はいくつかあるが、その中の一つに、「ツール(刃物)がほとんどついていない」というのがある。例えるならボール盤はあるが、ドリルがないようなもの。ドリルならホームセンターに行けば安価で買えるが、旋盤用のバイトで、しかもこんな小さな工作機に使うものなど、そう簡単に手に入るものではない。

 ということで、まず第一弾の改良。突っ切りバイトを、知り合いの加工屋さんに頼んで削りで作ってもらった。下の写真は、使ってみたところ。研ぎやすさを考えて掬い角はつけていない。
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 今後も改良は続く。

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【余談1】
 保証書を見たら、購入年月日が1997年9月。いまから22年も前のことだった。値段が当時で58000円。結構高い。こういうものを友達に譲ってしまったという当時の心境を推し量るに、もう本当に匙を投げたということなのだろう。

【余談2】
 今回 emco のサイトを見て知ったのだが、この鮮やかな赤は、 emco のコーポレートカラーのようだ。さすがヨーロッパの企業だ。こういうところはしっかりしている。一連の製品のデザインも統一性があって洗練されていてかっこいい。



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将棋、その後 [雑文]

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 二つ前の「2018年秋の出来事(4)」という記事で、NHKの将棋講座の段級位認定試験にチャレンジ中ということを書いた。その結果が出たので、これを書いておきたい。2018年10月~2019年6月まで9か月のトライアルの結果は下記の通り。(注1)

(下記で、〇は正解、△は不正解)
2018年10月 〇〇
2018年11月 〇〇
2018年12月 〇△
2019年 1月 △〇
2019年 2月 〇〇
2019年 3月 〇〇
2019年 4月 △〇
2019年 5月 〇〇
2019年 6月 〇〇

 まず10月~2月で8割。この時点で二段が確定した。初段が目標だったので、予想外にいい成績を取って満足してしまい、ここでやめようかと一旦は思ったのだが、そのうちに「この調子なら三段まで行けるんじゃなかろうか」などと欲が出てしまった。それで1月~5月で9割を目指したところ、4月の時点で間違えてしまってあえなく失敗。(甘くはなかった) そこでさらに頑張り、2月~6月でようやく9割を達成、三段が確定した。

 夏のボーナスが出てすぐに日本将棋連盟に認定を申し込んだ。三段の認定料は54000円。普通の人はびっくりする値段だと思うが、20年前の後悔を再び味わうものかと思い、確定後はためらいなく手続きをした。免状は8月の初めに無事に届いた次第である。
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 なお、送られてきた免状の中に、これを入れる免状額の宣伝ビラが入っていた。日本将棋連盟謹製。ちくしょ~~。 商売が上手い。こんなの見たら欲しくなっちゃうじゃね~か~。暮れのボーナスで買うかどうか、現在思案中である。(いいカモだな、こりゃ)
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***
 さて、この認定試験のいきさつをある人に話したところ、「そのやり方ってもしかしたら不正ができるんじゃないのか?」と言われた。たぶん誰しもが、このやり方を聞いたときに感じる素朴な疑問だと思う。つまり、問題をコンピュータに解かせたり、自分以外の将棋の強い人に相談したりすれば、自分の実力以上の結果が出てしまうではないか、ということである。

 そこで、このやり方で問題はないのだろうか、とつらつら考えてみたのだが、不正をしても本人に都合の良いことが何も起こらない。することが全くの無意味であり、現実にそんなことをする人はほとんどいないのだろう。結果、このやり方でいいのだ、という結論に至った。(NHK将棋講座と日本将棋連盟の名誉のために)(注2)


***************
(注1)NHK将棋講座の段級位認定の仕組みについては、下記URLを参照。
「2018年秋の出来事(4)」
https://shonankit.blog.so-net.ne.jp/2019-01-13

(注2) 
1)不正をしてもそもそも意味がない
 自分以外の人に問題を解かせるのは、英語検定を替え玉で受験するようなものである。こういう試験は自分の実力がどれほどのものかを自分で知りたいから受ける試験である。受験料を払って、人に問題を解かせるとは、どういうことなのか。もしかしたら見栄を張るための道具として取る、という人がいるかも知れない。しかしそれもずいぶん程度の低い話で、そんなのはごく少数だろうと思う。

2)不正をしても得をしない
 将棋で何段とったところで一般企業の就職活動に有利になることはない。国会議員に立候補する人がプロフィールに将棋何段と書いてあっても、親しみがわく程度であって公約や政治理念や手腕とは無関係である。完全に趣味のものであって、この肩書で得をすることはない。

3)不正をしても利益がない
 例えば「9割の正解率の人に、もれなく100万円をプレゼント」という企画ならば不正をやる人がいくらでも出てくるだろうと思う。しかし実際は9割正解したら、免状を得るためにはその人がお金を払うのである。不正をやるような(=利益を不当に追及するような)性質の人が、決して安くはない認定料を好んで負担するとは、とても思えない。

4)不正をしても自分が損をする
 認定試験で不正をするとは、つまり自分の実力が「低い」のに「高い」と評価されることを意味する。仮に1級の実力の人が不正で三段として公式に認定されてしまったとする。すると公式大会では三段の部に出場することになる。まず間違いなく負けるだろう。不正をして勝ったら問題はあるが、負けるなら直接的な被害は誰にも及ばない。

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