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中国出張(7) 中華レストランにて [雑文]

 我々がこちらに出張した場合、中華料理を食べにみんなで行く店は決まっている。その店はビール飲み放題で、しかもメニューに写真が載っているから、それを見れば、どんな料理かは大体想像がつくのだ。メニューに写真が載っているということは非常に重要である。載っていない場合は、料理の名前でその内容を判断しなければならない。魚とか牛とか炒とか湯とかラー(からいという意味の漢字)などという字面から大体の想像をつけ、あとは出てきたときのお楽しみ。写真が載ってはいても、そのほとんどは日本で食べたことのないものだから、それはそれで、出てきたときのお楽しみなのであるが、自分は幸いにして中華の店でまずいと思ったことがない。からくて食べられないなんてこともない。何を食べても美味しいという幸せな人間なのである。

 中華料理の店(と言っても現地の人にとっては普通のレストラン)は、日本人相手の商売ではないから、日本語を話せる服務員はいないのが普通である。だから大抵の場合、注文するときは難儀する。問答無用で中国語でまくし立てられる。しかし何度も行くうちに、何を聞かれるかが2つほどわかってきた。店に入ると、まず「何人か?」を聞かれる。次にテーブルに着くと「お茶は何を飲む?」と聞かれる。その後は降参、メニューを指で指し示すのみ。
 一つ目の質問は日本でも普通にあるが、二つ目の質問は日本ではまず有り得ない。日本ではレストランに行けば、何も言わなくても最初に水がでてくる。食事が終わって黙っていた場合にお茶がでてくることもある。しかもそのお茶は緑茶であり、その他の選択肢はない。中国ではいろんな種類のお茶があるので、それを選べるようになっている。

 さて、稀なケースだと思うが、先日、中国語オンリーの服務員の中に、日本語に興味をもつ人がいて、結構盛り上がった。日本人に対して興味を持っているからなのか、それとも、日本語を勉強することが収入アップにつながるからなのか。いずれにせよ、日系企業がこれだけ進出している地域であれば、日本という国はどうしても目につくのだと思う。結局、昔から日本と中国は切っても切れない関係にあるのだ。日本と中国が仲良くしなければ、アジアの平和はない。ちょっと堅いか。(笑)

 その服務員(女性)は、我々になんやかんやと中国語で話しかけてきたが、我々がほとんどお手上げ状態なのがわかると、伝票の裏に自分の話していることを書き始めた。書いてくれればなんとかわかる。
「あなた方の話す日本語を理解したいがわからなくて申し訳ない」
「いえいえこちらこそ、中国語がわからなくてすいません」←これは心の中。「没問題」というのが精一杯。

「広東にどのくらい滞在するんですか」
「三週間です」
「20日?」びっくりしている。
 これは後でわかったが、質問の解釈を間違えた。「日本から広東まで来るのにどのくらい時間がかかるのか」と聞いていた(らしい)。わからない単語があったので、あてずっぽうで返事をしたけれども会話が破綻してた。(苦笑)彼女はやがて、
「退勤の時間になってしまいました。」と書き、「謝光臨。サヨナラ」と言って去っていった。
 こういう人の存在は貴重だ。というのは、我々のやりとりを見て、日本語がわからない服務員も興味をもって首を突っ込んでくる。つまり周囲を巻き込んでくれるのである。これこそ日中友好の架け橋ってやつだ。

 広東省ではスイカが一年中食べられるようで、デザートには必ずといっていいほど出てくる。日本人の中には、スイカに塩を振って食べる人は少なくないが、一緒に行った人が「塩をくれ」と言おうとした。でも言えない。「塩」を意味する中国語の漢字は日本の字とは違う形をしているから、紙に「塩」と書いても、中国の人はわからないのである。ちなみに僕はこの漢字を本で見たことがあったのだが、ド忘れしてしまった。(使えねえやつ。)同行のメンバーは知恵を絞り、なんとか伝えようとして「海水」「蒸発」とか書いたりする。中国人にとってはまるでクイズだ。かくして、本当に塩がでてきたときの達成感は、日本では味わえないものだった。この日は結構盛り上がった。

 友好の架け橋になってくれた服務員から「謝謝とは日本語でなんと言うか」と聞かれ、「ありがとう」と教えると、彼女は「アリアトウ」と発音した。だから「あり『が』とう」と意識的に「が」を強く発音してみせると、本当にその通りに「あり『が』とう」になってしまった。これは他にもう一人の中国人(我々の仕事を手伝ってくれた製造の女の子)でも同じことが起こったので、ある程度一般性を持ったことだと思う。つまり、我々日本人が普通に発音する「ありがとう」の「が」は、「あ」とも「が」ともつかない、非常にあいまいな「が」になっているらしい。そういえば、日本料理屋の女の子が、客を送り出すときに、「ドモアリガトゴザマシタ(どうもありがとうございました)」と日本語で言うが、このときの「ありがとう」の「が」は我々日本人よりも強い発音である。こういうことは、日本にいるだけではわからない。

 比較言語学とか対照言語学ってのは、こんなことに興味を持つ人が始めた学問なんだろうか。ひょっとしたら自分はこの学問分野に向いているのかも知れない、なんて思ったりする。


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くるみ

ひぐらしさん、こんにちは♪
くるみもパースで中華料理屋さんに行った時に、同じような体験をしました。
写真がなく、字面だけでどんなものが出てくるか想像するのは結構大変で、はらはらどきどきしますよね(^^;
日本語の発音、『が行』は、よく歌などで(普通の時もかもですが;)鼻に抜けるような感じで表現されたりしますよね、そういう曖昧な音があるから、日本語には柔らかいイメージがあるのかもしれないなぁ~と感じさせられました。
スイカの塩は、外国人とのやりとりが成功した時の喜びが象徴された出来事で、(そのほんのちょっとした、でも自分にとってはかなり価値のある)達成感は何にも変えがたいものがありますよね。(とっても共感;)
by くるみ (2006-11-28 06:44) 

ひぐらし

くるみさん、こんにちは。塩の一件は、たしかに「やり取り成功」となったわけですが、実はこの場では他にもありまして・・・。醤油が欲しかったとき、これを紙に書こうと思ったのですが、醤油という漢字を書ける人が誰もいないという情けない事態が発生。「正油」でいいんじゃないか、なんて無責任なことを言う人までいる始末。なんかこんな感じだったよな~と思い、似た漢字を書いたら、なんとかわかってくれて、でも、出てきたのは、醤油と酢と油の混ざった、餃子のタレのようなものでした。あとで日本料理屋の女の子に聞いてみると、「日本の醤油と中国の醤油はそんなに違わないはずだ、おかしいなあ」と言ってました。この件はまだ謎です。(笑)
by ひぐらし (2006-11-28 23:49) 

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