芸能界は変わった [テレビ]
(この記事は、僕と同じ年齢層の人(30年前に高校生)にしか共感されないかも知れません。悪しからず)
先日、沢田富美子さんに関する記事を書いて以来、しばらくの間、余韻に浸ってしまった。YouTubeで動画を捜してみたら、あるわあるわ、お宝のような映像がザクザクと。家庭用のVTRが発売されたのが、70年代後半だったというから、80年代には、かなり普及していただろう。(ちなみに僕の家にはなかった)
当時、撮りためた映像をアップしているのだろう。しかも、テレビの音声が悪いところを、別の音源を重ねて改善したりしている。コメントには「アップありがとうございます」とたくさん書かれている。全くありがたいことだ。こうやって30年前にタイムスリップができるのは、30年前の思い出がある年齢層だけに許された特権である。
さて、その中から興味深い動画を2つ紹介したい。どちらも、当時活躍した石川ひとみさんのものである。
まず、一つ目。「オリーブの栞」。
http://www.youtube.com/watch?v=j8kNl17TdUs&NR=1
何か、水泳大会か何かのイベントのときのものだろう。ビキニの水着姿で歌っている。現代ではなかなか見られそうもない演出である。こういう映像を喜んで見ていると「いやらしい」と非難する女子がいそうなので念のために言っておくが、こうした演出は30年前は普通だったのだ。
この曲はあまりヒットしなかったが、セクシーな雰囲気で、好きな曲だった。ただ、その雰囲気が雰囲気なだけに、歌い手が妖艶に見えるような演出をすべきであって、ビキニの水着を着て、プールのような明るい開放的な場所で健康的に歌うようなものではない。明らかに演出を間違えている。しかし、それが30年前のやり方だったのだ。
昔はグラビアアイドルという職種がなかった。雑誌のグラビアのページを飾るのは大抵は、アイドル歌手だった。要するに歌手がグラビアアイドルを兼業していたのだ。だからビキニで歌うなんてことも、普通だったのだと思う。(注1)
もう一つ。「冬のかもめ」。これも好きな歌だった。
http://www.youtube.com/watch?v=T6sk1mCnpQA&feature=related
「ぴったしカンカン」と言えば、当時人気のあったクイズ番組で、番組中盤には、「一枚の写真」というコーナーがあった。大抵は歌手の子供の頃の写真で、「これは誰だ」と言う問題が出題され、正解が出るとそのゲストが登場。あとはその人に関する問題で盛り上がり、最後はその人の歌で終わり、といった内容だった。
さて、この動画は、その「ぴったしカンカン」に石川ひとみさんが出たときらしい。「冬のかもめ」は、きちんと演出されれば、聞いている人が泣いてしまうくらいの悲しい歌だ。それなのに、「ぴったしカンカン」のクイズで大いに盛り上がったあとで、こういう歌を歌っても、歌の内容が伝わるわけがない。歌っている彼女も、どんな表情を作ればいいのか困っているみたいだ。
最近は、どちらのパターンも見なくなった。アイドルの水泳大会もなくなったし、バラエティ番組で歌手が歌うということもなくなった。歌手は歌手として、歌唱で表現活動を行うことに専念できるようになった。そのかわり「姿」を見せる専門のアイドルが登場した。仕事の内容が多様化して、自分の目指す仕事に、より深く専念できるようになったのだと思う。何でもかんでもアイドル歌手がやっていた時代は、もうとっくに終わったのだ。
以前、テレビに出ることを嫌がる歌手が少なからずいた。その人たちの気持ちが、今にしてようやくわかった。
なお、「オリーブの栞」の正しい演出と思われるのは下記。
http://www.youtube.com/watch?v=lP5XrAEA3sw&feature=related
石川ひとみさんは、一時病気をしたりしてずいぶん苦労したようだが、今では元気に芸能活動をしている。よかったよかった。
【蛇足】
上の内容から、逸脱するが、もうひとつ芸能界で大きく変わったと思うことがある。それは「子役」の活躍。昔のドラマに出てくる子役と言えば、セリフ棒読みのどうしようもないのしかいなかった。それが、吉岡秀隆さんあたりから、だんだん上手い子役が登場するようになり、今では演技で人を感動させるような子役がたくさんいる。これも大いなる進歩だと思う。
(注1)
2011年10月16日追記
歌手がグラビアアイドルを兼業している状況は昔だけでなく今でも続いているようだ。最近AKB48と言うグループを見て、そう思った。
先日、沢田富美子さんに関する記事を書いて以来、しばらくの間、余韻に浸ってしまった。YouTubeで動画を捜してみたら、あるわあるわ、お宝のような映像がザクザクと。家庭用のVTRが発売されたのが、70年代後半だったというから、80年代には、かなり普及していただろう。(ちなみに僕の家にはなかった)
当時、撮りためた映像をアップしているのだろう。しかも、テレビの音声が悪いところを、別の音源を重ねて改善したりしている。コメントには「アップありがとうございます」とたくさん書かれている。全くありがたいことだ。こうやって30年前にタイムスリップができるのは、30年前の思い出がある年齢層だけに許された特権である。
さて、その中から興味深い動画を2つ紹介したい。どちらも、当時活躍した石川ひとみさんのものである。
まず、一つ目。「オリーブの栞」。
http://www.youtube.com/watch?v=j8kNl17TdUs&NR=1
何か、水泳大会か何かのイベントのときのものだろう。ビキニの水着姿で歌っている。現代ではなかなか見られそうもない演出である。こういう映像を喜んで見ていると「いやらしい」と非難する女子がいそうなので念のために言っておくが、こうした演出は30年前は普通だったのだ。
この曲はあまりヒットしなかったが、セクシーな雰囲気で、好きな曲だった。ただ、その雰囲気が雰囲気なだけに、歌い手が妖艶に見えるような演出をすべきであって、ビキニの水着を着て、プールのような明るい開放的な場所で健康的に歌うようなものではない。明らかに演出を間違えている。しかし、それが30年前のやり方だったのだ。
昔はグラビアアイドルという職種がなかった。雑誌のグラビアのページを飾るのは大抵は、アイドル歌手だった。要するに歌手がグラビアアイドルを兼業していたのだ。だからビキニで歌うなんてことも、普通だったのだと思う。(注1)
もう一つ。「冬のかもめ」。これも好きな歌だった。
http://www.youtube.com/watch?v=T6sk1mCnpQA&feature=related
「ぴったしカンカン」と言えば、当時人気のあったクイズ番組で、番組中盤には、「一枚の写真」というコーナーがあった。大抵は歌手の子供の頃の写真で、「これは誰だ」と言う問題が出題され、正解が出るとそのゲストが登場。あとはその人に関する問題で盛り上がり、最後はその人の歌で終わり、といった内容だった。
さて、この動画は、その「ぴったしカンカン」に石川ひとみさんが出たときらしい。「冬のかもめ」は、きちんと演出されれば、聞いている人が泣いてしまうくらいの悲しい歌だ。それなのに、「ぴったしカンカン」のクイズで大いに盛り上がったあとで、こういう歌を歌っても、歌の内容が伝わるわけがない。歌っている彼女も、どんな表情を作ればいいのか困っているみたいだ。
最近は、どちらのパターンも見なくなった。アイドルの水泳大会もなくなったし、バラエティ番組で歌手が歌うということもなくなった。歌手は歌手として、歌唱で表現活動を行うことに専念できるようになった。そのかわり「姿」を見せる専門のアイドルが登場した。仕事の内容が多様化して、自分の目指す仕事に、より深く専念できるようになったのだと思う。何でもかんでもアイドル歌手がやっていた時代は、もうとっくに終わったのだ。
以前、テレビに出ることを嫌がる歌手が少なからずいた。その人たちの気持ちが、今にしてようやくわかった。
なお、「オリーブの栞」の正しい演出と思われるのは下記。
http://www.youtube.com/watch?v=lP5XrAEA3sw&feature=related
石川ひとみさんは、一時病気をしたりしてずいぶん苦労したようだが、今では元気に芸能活動をしている。よかったよかった。
【蛇足】
上の内容から、逸脱するが、もうひとつ芸能界で大きく変わったと思うことがある。それは「子役」の活躍。昔のドラマに出てくる子役と言えば、セリフ棒読みのどうしようもないのしかいなかった。それが、吉岡秀隆さんあたりから、だんだん上手い子役が登場するようになり、今では演技で人を感動させるような子役がたくさんいる。これも大いなる進歩だと思う。
(注1)
2011年10月16日追記
歌手がグラビアアイドルを兼業している状況は昔だけでなく今でも続いているようだ。最近AKB48と言うグループを見て、そう思った。
北の国からの純くん役だった吉岡くんはたしかに上手かったと思う。
最近、J-comで昔のドラマや時代劇を見たら何だコリャ位の棒読み。良い例がウルトラマンシリーズだと(笑)
昔のアイドルは残念ながら世代じゃないので解らないけど楽しく読ませていただきました(^_^)v
by つばさ (2010-05-06 13:16)
つばささん、こんにちは。ウルトラマンシリーズを思い出しました。僕の場合「ウルトラマン」=「帰ってきたウルトラマン」なのですが、次郎君は上手かった。あの子は上手いからレギュラーになれたんでしょう。でも、それ以外の子役はだめでした。ただ、当時はそれで満足してましたけどね(笑)
「帰ってきたウルトラマン」のネタもいつか書いてみたいです。そのときはまたよろしくお付き合い下さい。
by ひぐらし (2010-05-08 06:52)
はじめまして。
90年代をよく知る(そして今ではかなり否定的な見方をしている)世代の者として、いくつか気になった部分(これは皮肉としての意見なのかもしれませんが)についてコメントさせて頂きます。
> 歌い手が妖艶に見えるような演出をすべき
これを突き詰めたのが、90年代以降では当たり前となったPromotion Video(PV)だと思います。ビーイングブーム以降のPV重視なプロモーションは、大きな弊害をもたらしたと思います(楽曲の商品化)。
> 以前、テレビに出ることを嫌がる歌手が少なからずいた。その人たちの気持ちが、今にしてようやくわかった。
歌唱披露の場が数少ないテレビ歌番組へ集約され、生歌ライブの実施が激減する歌手が多く現れてしまったと思います。浜崎あゆみやPerfumeの生歌のひどさはよく指摘されていると思います。
> 何でもかんでもアイドル歌手がやっていた時代は、もうとっくに終わったのだ。
バラエティやグラビアならまだ両立容易な気がします。90年代以降、歌手であるにもかかわらず、服飾や演劇などにも深く携わることのできる人が存在するのは、私にとっては大きな疑問です。
> 歌手は歌手として、歌唱で表現活動を行うことに専念できるようになった。そのかわり「姿」を見せる専門のアイドルが登場した。
グラビアアイドルとか、バラドルとか、読者モデルとか、あのようなジャンルは無くした方が良いと私は思います。見た目をウリにするだけの芸No人は悲劇だと思います。
表現者(例: 服飾/話術/演技/歌唱/演奏/演出)の分業は進んだ(一部は自動化された)一方で、
楽曲の製作者(作詞家/作曲家/編曲家)の仕事は、集約化(一個人化) or 集団化(匿名化)された。
この悪影響は非常に大きいかったのでは?というのが、音楽業界に対する今の私の思いです。
by sinwaki (2011-11-11 22:48)
sinwakiさん、こんにちは。ツイッターを拝見しました。なんか、ものすごい深い分析をされてますね。もしかしてプロの方? あまりテレビを見ない私が、1年ほど前に偶さか気が向いて、慣れないことを書いた記事ですので、sinwakiさんのような方にコメントをいただくと恐れ多い気がします。「表現者(例: 服飾/話術/演技/歌唱/演奏/演出)の分業は進んだ(一部は自動化された)一方で、楽曲の製作者(作詞家/作曲家/編曲家)の仕事は、集約化(一個人化) or 集団化(匿名化)された」というのは「目からウロコ」でした。
by ひぐらし (2011-11-12 10:38)