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思い出のカレーハウス [自炊研究]

 今から30年以上前のことである。東京駅の八重洲中央口から地下街に入ってすぐのところに、「カレーハウス○○」という小さなカレー専門店があった。

 店の名前「○○」とは? ヒント。同じ漢字が2つ並ぶ。浅井三姉妹の長女で豊臣秀吉の側室になったあの女性の名前だと言えばわかると思う。それをなぜ伏せ字にしたかというと、ネットで検索したときに、同じ名前の店が山ほど見つかるのだ。日本人はこの名前が好きなのか? とにかく間違って迷い込んでしまう人がいると困るので、一応伏せた。

 初めてこの店に入ったときのことをよく覚えている。その日は高校1年生の終わり頃、東京のある予備校に模試を受けに行った日だった。当時は千葉の実家に住んでいて、東京に行く機会はさほど多くはなかったので、たまに上京する機会があると物珍しさであちこち見物した。その日はたまたま東京駅の地下街を散歩していて、その店を見つけたのだった。

 何か心惹かれるものがあり、またそのとき腹が減っていたので入ることにした。店のウエートレスは宝塚の男役みたいなかっこいいお姉さんだった。そして出てきたカレーが、とびきり旨かった。「なんて旨いんだろう」と思った。初めて食べる味だった。

 「こんな旨いカレーが食えるなんて、さすが東京だな」と思った。(笑)以来、乗り換えでここを通るたびにその店に行くのが楽しみになった。どんな味だったかというと、グルメレポーターみたいな気の利いたことは言えないが、「コクと酸味の絶妙なバランス」とでも言おうか。特にインパクトがあったのはあのちょうどいい酸味だった。

 その後、大学に入ってからは都内に毎日通うことになった。東京駅は通学経路ではなかったが、通れば大抵この店に寄った。ところが・・・。

 あるときを境に味が変わってしまったのだ。あのカレーを作っていた料理人が辞めたのだと思う。どんな味に変わったかは思い出せない。印象に残っていないから平凡な味だったのだろう。料理人がやめてあの味が出せなくなったので、きっと誰でも作れるような業務用のルーを使う方法に切り替えたのだと思う。がっかりした。店からは次第に足が遠のいたが、それでも「もしかしたら」と思い、たまに寄ったりもした。でもやっぱりだめだった。

 今ではもうこの店はない。ただ、僕はいまだに東京駅の地下街に行くと○○というカレーハウスが、どこかにあるような気がして、時間があると、ぶらぶら歩いて探してみたくなるのである。僕が通っていた当時、この店は地下街の中で1回か2回、場所が変わっている。だから当時も「あれ?どこだっけ?」と探して、辿りつくパターンだったのだ。

 もしかしたら新装開店しているかもしれない。いや、もしかしたら店の名前が変わっているのかも。などと思って試しに別の店に入ってみたりする。でも、やっぱり違っていてがっかりする。あの頃の習いがいまだに体に染みついたままなのである。

***
 さて。 今、料理をやり始めて1年半が経とうとしている。最近ふとしたことで、このカレーハウスのことをまた思い出し、あの味を再現できるような気がしてきた。今までは全くそんな気がしなかったのだが、少々経験を積んだせいか、何となくあの味のレシピが想像できるようになってきた。何回か、試行錯誤した結果、とりあえずあの「コクと酸味の絶妙なバランス」に辿りついた。レシピを紹介したい。(2人分)

01.jpg

1)最重要項目
たまねぎ(微塵切りまたは千切り)80gをバター20gで飴色になるまで炒める。時間の目安は10分程度。これ最重要。ついサボりがちだが、ここは絶対に手を抜かないこと。これでコクが決まる。

2)具材
じゃがいも:40g、にんじん:40g、肉:80g
これらを適当に切っておく。分量は目安であり多少のアレンジは可。炒めておけば、なお美味しいかもしれないが、炒めずにただ煮るだけでもいける。今回はできるだけ単純に作った。

3)カレーソース
 下記をどんぶりの中であらかじめよく混ぜ合わせる。混ざったら鍋に入れて火にかける。煮立ったらトロミがついてカレーソースになる。
水:300㏄、
コンソメ:小さじ2
小麦粉:大さじ2
カレー粉:大さじ1(SB赤缶)
ソース(ウスター):大さじ1
トマトケチャップ:大さじ2
オイスターソース:小さじ1
砂糖:小さじ0.5
注意)鍋の中で湯を沸かしてから一つ一つ入れようとすると小麦粉で失敗する。(小麦粉が熱湯に入ると、混ざる前にいきなり固まろうとするため)小麦粉はあらかじめ冷水で溶いた方がよい。結局、全部を水で溶いてから沸かすのが一番安全で簡単。

4)上記3)の中に、1)と2)を入れて、10分煮込んで出来上がり。

 特別な食材や香料は使っていない。非常にシンプルだけど、その昔「なんて旨いんだろう」と思ったあの味に非常に近い。興味のある方、お試しあれ。写真の黒い部分は焦がしたたまねぎ。まあこの程度やらかしても、味に支障はない。市販のカレールーを使わない方法は面倒なものだという固定観念があったが、他の料理の手間に比べれば、さほどのものでもない。それと、味を自分で自由に変えられる面白さがある。市販のルーを使っていたら思い出のカレーハウスの味に再会することはできなかった。
 

 嗚呼。それでもやっぱり、東京駅の地下街に行くと、また探すだろうな。



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