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Sさんの一件で考えたこと [テレビ]

 人気アイドルグループのSさんのことをずっと書きたいと思っていたが、なんと先日、週刊誌に過去の交際のことを書かれて騒動になってしまった。こんな機会に書くのは残念なことだが、こんな機会だからこそ考えた内容もある。だからこの際、書いておこう。ただ、あまり愉快な話でもないから、人名は極力伏せることにした。

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 Sさんのことを知ったのは、ちょうど1年くらい前だった。当時Sさんは、所属するアイドルグループの中で、唯一、冠番組を持っていた。誰かが日経新聞のコラムで、この番組に出てくるSさんのヘタレっぷりが面白いと書いていたのでちょっと見てみた。うん、確かに面白い。へタレているだけではない。テレビを面白くするような的確なコメントを言える人である。以来、ネット動画でSさんの出ているのを探して見るのが楽しみの一つになった。

 僕みたいに、CDも買わず、ライブを見に行くこともせず、ただテレビやネット動画を見ているだけの人間は本当のファンとは言わない。野次馬である。しかし自分が30年若かったら、このグループに夢中になっていたであろうことは想像に難くない。Sさんの動画を見ているせいで、他のメンバーのことも良く知るようになった。

 Sさんの第一印象は、某局の番組で珍○ハンターになった、イ○トア○コさんに抱いたそれに似ていた。非常に個性的で、他の人が真似できないような何かを持っている。この人は愛されるだろうな、と思った。僕のこういう勘は、結構当たる。要するに僕の感性は、現在世の中で、いろいろな決定権を持っている地位の高い男性(有り体に言ってしまえばオッサンたち)と同じものである。オッサンたちは、ただ単に若い女の子が好きなわけではない。いい仕事が出来そうな女の子をきちんと選んで冠番組を作っているのである。

 この冠番組が終わったあと、Sさんは、「笑って○いとも」のレギュラー、某ファッションブランドのイメージキャラクター、某県の観光大使に選ばれたりして引っ張りだこになり、今年の人気投票では、グループ全体の二百数十名の中で、4位まで上りつめた。まさに順風満帆。そんなときに、あの報道があったのだ。昔、交際していたという男性が、その交際について、あれこれとリークしたらしい。

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■「卑劣」とは正にこのことだよ

 男女が互いに好きになり、親密になれば、やがてその二人だけの秘密を持つことになる。そしてそれは、あくまでも二人だけの秘密にしておくべきことである。たとえ結婚したあとで、不幸にして離婚することになったとしても、寝室でどんなことがあったかなど、第三者に語るべきことではない。世の中のほとんどの大人は、これを倫理として守っている。

 しかし、また逆な言い方をするなら、相手がこれを守るかどうかは、相手の倫理観に任せるしかない。Sさんは今やすっかり人気者になった。相手のステータスが高ければ高いほど、そのような過去の恋愛沙汰の話は好奇心の的になりやすい。つまり、高く売れる情報になる。その男は、情報の値段が上がるタイミングを見計らって、あることないこと、べらべらと週刊誌に売ったのである。

 週刊誌も酷なことをすると言う人がいるかもしれないが、僕個人は週刊誌を責める立場にない。なぜなら僕だって、たまに週刊誌を読んで人の噂話を楽しむことはあるからである。週刊誌が極悪非道の存在なら、とっくに滅びている。実際は需要があるからからビジネスとして成立しているのである。それにこの種の男は、一社に売ろうとして断られたら、別の出版社に売りに行くに決まっている。

 それにしても、なぜこんな卑劣なことができるのだろう。「卑劣」と言う概念を正しく認識していれば、「そんなことをするなら死んだほうがマシだ」という心のブレーキが働くはずである。それに子供の頃から普通の親に普通の環境で育てられれば、「正義」とか「勇気」とか「悪」とか「卑劣」とかいう抽象概念は、言葉で説明できなくても、自然に身に付いていくものだと思う。これが身に付かなかったということなのか。

 この男は出版社からさぞかし大金をもらっただろう。忌々しい話だが、法で裁くことはできないと思う。しかし、ほんの少しでも良心があれば、おそらく自分のしたことを後悔し、死ぬまで苦しみ続けるだろう。もしも良心がなければまた同じようなことをするのかも知れない。しかし、いずれ天罰が下るだろう。

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■童貞の話

 あるマスコミの調査では、今回の騒動があっても、9割以上のファンが、Sさんを何も変わらず応援し続けると言っているらしい。普通はそうだ。この話は過去の話であって、現在のSさん自体になんらの変化も起こらない。よって好きな人は好きなままだし、逆に嫌いな人はずっと嫌いなままだと思う。

 ただ、一つ興味深いのは、いままで熱心に応援していたファンの中に、今回のことで非常に腹を立て、「嘘つき」、とか「謝罪しろ」とか、「裏切られた」とか言って怒っている人が少数いることなのだ。それまでSさんが「男性と付き合ったことが無い」と言っていたのに、実際は有ったということが許せないらしい。嘘と言えば確かに嘘である。では、その嘘がどのくらい罪深い嘘かというと、さっきおやつをつまみ食いしたのに、してないとシラを切る程度にしか思えない。

 他人から見たら、笑って済ませるようなどうでもいい話である。まあお母さんなら教育のために叱るだろう。また、おやつをつまみ食いした子供の、1歳年下の弟からみたら、これは深刻な問題である。「兄ちゃんずるい!」と言って泣くだろう。

 Sさんが過去に男性と交際したことが許せない、あるいは偽ったことが許せないという男性は、おそらく女性と交際したことがない比較的若い男性だ思われる。自分が中学生くらいの頃のことを思い出すと、なんとなくわかる。好きな女の子ができて、毎日その子と楽しくお付き合いすることをあれこれと考えた。はじめてのデート、初めてのキス、初めての夜、すべてが初めてである。やがて結婚、出産・・・なんて10年以上先のことまであれこれと妄想していた。そして初夜のときは、自分が「未経験」だから、女性の側も当然「未経験」でなければならないと思っていた。

 なぜ「未経験」でなければならないか。それは逆に相手が経験豊富だった場合を想像してみればいい。いざコトに及んでも、なかなかうまくいかず、相手に困った顔をされ、リーダーシップは完全に女性に奪われる。男の面目丸潰れ状態で、ようやく終わる。自信喪失しているところに、さらに追い討ちをかけるように「それ手術した方がいいわよ」なんて言われたら? もう立ち直れない。プライドはズタズタである。そんなことがあってはならない。だから僕の恋するあの娘は、どうしても処女でなければならなかった。

 人間の価値や魅力なんて性的な経験とは別のところにある。実際のところ、僕が童貞を喪失した後で、人格が高貴になったとか、雰囲気がセクシーになったとか、体形が逞しくなったとか、人に特別優しくなったとか、そんなことはない。偉業を達成したわけでもない。人間なら誰でもやる、当たり前のことを一つやっただけである。自慢するものでもないし、やってないからといって卑下するようなものでもないのだ。しかし、自分が童貞を喪失してみないと、そのことがわからず、「経験」の有無に異常にこだわってしまう。「童貞=未熟者」と言う図式の、本当の理由はここにあると思う。

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 「水に落ちた犬を叩く」という諺がある。誰かが窮地に陥ったとき、その機に乗じて、その人を攻撃することを言う。

 水に落ちた途端に叩かれて、実際にその社会から追放されてしまう人が実際にいるが、そういう人は、大抵の場合、普段から素行が悪くて、周囲に敵がたくさんいる場合が多い。例えば、かつてものすごく強かったモンゴル人の横綱は、何度も問題を起こして、ついに引退に追い込まれた。一度のミスでこうなったわけではなく、それなりの蓄積があって、周囲から味方がだんだんいなくなってしまったのだと思う。人気力士だったから残念がるファンはたくさんいた。でも仕事仲間から「こんな奴と一緒に仕事できるか」と見放されたのだ。

 これに対して、水に落ちてもすぐに助けてもらえる人もいる。例えば、高齢の妊婦に対する失言があったあの女性歌手の件、酔って街中で裸で騒いだあの男性歌手の件、一時的に騒動にはなったが、どちらもあっというまに鎮静化した。これはつまり、普段の素行がいいことの証である。今回のSさんの騒動でも同じものを感じた。真面目に仕事をし、他人に対する配慮を忘れずにいれば、困ったときにたくさんの人が味方になって、助けてくれるのだ。

 単に「ファンがたくさんいる」ということではない。Sさんの周囲に、Sさんと一緒に仕事をしたい、と思っている人(芸能人であれスタッフであれ)が大勢いるということである。社会人としてこれほど幸せなことはないだろう。よかったよかった。僕は野次馬ではあるが、野次馬なりに、これからも地味に応援し続けようと思う。



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