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夏の終わりに [雑文]

 昨年(2011年)の夏は震災の影響から日本中が節電モードになり、僕もエアコンを一切使わずに過ごしてみた。やってみると案外いけるもので、今年も同様にチャレンジしている。槍ヶ岳から帰ったあと、姪が3日間遊びに来て、その期間だけエアコンをつけたが、それ以外はなんとか使わずに過ごせている。ただ、暑さのため頭がボーっとするので、睡眠時間はエアコンを使った場合に比べて長くなっているような気もする。

 考えてみれば、エアコンを使わずに夏を過ごすなんて、子供の頃は普通だった。友達の家に遊びに行っても、エアコンがある家なんて、そう多くはなかったと思う。よく覚えているのは、「今日はやけに暑いと思ったら30℃を越えてるよ」という日常会話。30~40年前は30℃を越える気温というのが珍しかったのだ。今は普通である。気候が当時とは明らかに違うことを実感する。

 今年の夏も暑かった。山から帰ってずっと雨が降らない日が続いたが、9月に入って、ようやく思い出したように雨が降り、気温も何とか下がりつつある。このまま恐らくエアコン無しの目標は達成できそうである。夜になると鈴虫やらこおろぎの音が聞こえる。これからだんだん僕の好きな季節になる。

 猛暑との戦いも一区切りということで、書きそびれたことをここでまとめて書いておこう。

【其の壱】
先日、北アルプスの山小屋で買った記念バッジ。いつも山に登ったときは、記念に買うことにしている。
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【其の弐】
 上高地の河童橋のキャラクターの河童をデザインした鍋敷き。これは姉が買ったものだが、お盆休みに帰省したときに姉の家で見つけて、かわいかったので、もらってしまった。
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【其の参】
 お盆休みに、ウォルター・ウエストン(直前の記事を参照)の「日本アルプス ~登山と探検~」を読んでみた。
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 感想を一言。実に読み難い本である。ウエストンによって書かれたのが明治時代、翻訳は昭和38年である。現代のような洗練された訳ではないのは仕方がないとしても、「一体何なんだ、この日本語は」と思う。ただし、登山史を研究している人にとっては貴重な資料だと思うし、「読み難い」とは「内容がつまらない」ということではない。印象に残ったエピソードを断片的に書いてみる。

(1)蚤(ノミ)の話。旅館に泊まったときに布団に蚤がいて困ったというエピソードがある。僕は今までの自分の人生で、蚤というものに出会ったことがない。登山を始めてからも、山小屋に蚤がいたなどという話は聞いたことがない。しかし明治時代は、普通の宿屋に、普通に蚤がいたのだ。

(2)信仰登山者の群れを興味深く観察している。修験者が一本歯の下駄を履く理由、ほら貝を吹く理由、そして白装束を身に着けた団体がいて、ちょうど恐山のイタコのように霊を呼び出している光景などなど。西洋人の好奇心から、まわりの人にいちいち尋ねて記録を取ったのだろう。

(3)著者は民間伝承にも興味をもち、日本人から聞いた話を忘れずに書き留めている。一つ挙げるなら、例えば、案内人の嘉門次(直前の記事を参照)から聞いた、梓川にかかる雑炊橋(ぞうすいばし)という橋にまつわるエピソードがある。川の両側の男女が恋に落ち、二人は互いに雑炊を食べて節約して金を貯め、木材を買い、これを両側からかけて橋を作って、互いに行き来できるようになり、結ばれたという話である。

(4)この本の山行には案内人が必ず登場する。これについて考えた。現代の日本では、もう前人未到の地は無くて、日本中の山について詳しい登山地図が出版されているから、そのおかげで、ほとんどの山にはガイド無しで行くことができる。しかし明治時代、登山という概念がなかった時代には、登山地図などもちろんなかった。そういう環境にあって外国人である著者が山に登ろうと思ったら、山の地理を知っている、地元の漁師を案内人として雇わなければ安全な登山は出来なかったはずである。
 案内人の賃金が、現代の貨幣価値に換算してどのくらいだったのかは、よくわからないけれども、「わずか○○シリングで・・・」などと言う表現の中に、当時のイギリスと日本の経済格差を垣間見ることができる。おそらく容易に雇える金額だったのだろう。

(5)英語の駄洒落。いくつかあったが秀逸だと思ったのは、We viewed the mist, but missed the view. 「私たちは霧は見たが、眺めは見損なった」というもの。 ・・・翻訳者が英語をそのまま残している。確かに日本語にしてしまったらこの音韻は伝わらない。まあ古今東西を問わず駄洒落オヤジはいる、ということなのだろう。

 この本は、何年かして、登山の経験をたくさん積んだ後で、また読み返してみたら、また新しい発見があるかも知れないと思った。
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