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僕が天文少年だった頃(2) [天文]

【科学のアルバム】(あかね書房)

 2011年4月に「ラジオにまつわる思い出話(1)」という記事を書き、その中で、僕が小学校6年生のとき、教室が図書室だったことを書いた。(注1) いつでも好きなだけ本が読めるという恵まれた環境にいて、僕が最も興味を持ったのはラジオと天文だった。

(注1)興味のある方は下記の記事を参照されたし。
ラジオにまつわる思い出話(1)
http://shonankit.blog.so-net.ne.jp/2011-04-09

 この図書室(=教室)に、シリーズものの科学図鑑があった。あかね書房の「科学のアルバム」というもので、動物、植物、昆虫、天文、気象など、様々なタイトルがあり、それぞれの専門家が執筆していた。あかね書房のWEBサイトで調べたところ、このシリーズは現在でも発行されている。天文関係で一番古いのは「月をみよう」というタイトルの本で、1970年が初版らしい。

 ネットの古書店で検索したら、このシリーズで天文学・地学を集めた20冊セットが6000円で売っていたので買ってみた。
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 送られてきた本を見てびっくり。補充カードが入っている。いわゆる新古というやつらしい。いい買い物をした。

 中を眺めてみて思った。やっぱりいい本だ。子供用ではあるが、大人が見ても十分楽しめる。「科学のアルバム」という名前の通り、写真が豊富であり、解説は簡潔明瞭だ。この図鑑は子供たちが科学に興味をもつのに大きな役割を果たしてきたのではないだろうか。(かく言う僕がそうなのだから) 初版から40年以上経った今でも版を重ねているのは良書の証である。そんな本は滅多にないだろう。ひとつ選んで中をちらっと紹介してみよう。
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 特にこの「星の大きさ比べ」のところは覚えている。オリオン座のベテルギウスの直径は太陽の500倍もあるということは、太陽を直径1㎝の円だとしたらベテルギウスは直径5mの円だということになる。しかも太陽の直径は地球の109倍である。星というものの途方もない大きさに、当時は心の底から驚嘆したものだった。このシリーズ図鑑は全部がこんな感じで、感動の連続だった。

 ちなみに、このシリーズの天文関係の本のほとんどは、藤井旭さんが執筆したものである。この人は日本のアマチュア天文家のカリスマのような人で、以来、この人の本にはずいぶんとお世話になった。藤井さんは今でも現役で活躍されている。

***
 たまたま、この頃、小学校の理科で天文の授業があったが、暇さえあればこの科学のアルバムシリーズを始め、図書館にあった天文関係の本を眺めていたので、初歩的なレベルの知識はかなり持っていて、テストの成績はよかった。ただし一つだけ×を食らったことがある。こんな問題だった。「地球は( )軸を中心に自転をしており、その軸は北極星の方向を向いている」 ( )の中に入る言葉は何か。 

 地球の自転する軸を地軸という。だから、括弧の中に”地”という字を入れるのが正解になる。これに対して、僕は“自転”軸と答えた。なぜかというと、自転している星は何も地球だけではなく、惑星だろうが太陽だろうがみんな自転している。例えば「天王星の自転軸は98°傾いている」なんていう記述が図鑑に書いてある。ネットで“自転“という項目を検索すれば自転軸という言葉が一般的に使われていることがわかる。つまり僕は地球限定の言葉ではなく、天体一般に使われている言葉の方を回答したのだった。

 これを間違いと言われ、天文学者志望だった僕としては看過するわけにはいかず、担任の先生に異議を申し立てたが却下された。それまではずっと、先生というのは何でも知っているすごい人だと思っていたのに、このときは先生というものに対して非常に失望した。悔しいやらアホらしいやら情けないやらで、何度も思い出したので、僕の記憶に強烈に残っている。

 まあ、先生とて普通の人である。天文学を専攻したわけでもないし、普段から天文書を熱心に読んでいるわけではない。あくまでも普通の人が先生になっているのである。だから天文学用語など知らないのは当然なのだ。お上の決めた指導要領に忠実に従って教えているだけだから、地軸はあくまでも地軸であり、自転軸などという言葉は、この人の頭の中の辞書にはなかったのだと思う。

 また別の角度から考えると、小学生も高学年になればある程度のレベルの本を読めるようになるし、何かに興味をもったときののめり込み方とか、知識の吸収の仕方は物凄いものがある。一部の知識が肥大化して普通の大人を凌駕してしまうことは珍しいことではない。当時の僕がそうだったと思う。いわゆる「イヤなガキ」である。(笑)

 先生が僕のクレームに取り合わなかったのは「イヤなガキ対策」だったのかも知れない。またテストには出題意図というものがあり、求められている答えがある。それに合わない答えを書けば、たとえ学術的に正しくても、事務的に間違いにされてしまうことがある。この事件では、そんなことを学んだ。

(つづく)

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