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源氏物語を読みたい(1) [読書]

 新型コロナウイルス感染症対策の在宅勤務から、そのまま大型連休に突入した。勤務でも休日でもいずれにしても家にいなければならない。帰省も断念した。だから、普段ではできないようなことにチャレンジしようと思い、源氏物語を読んでみようと思い立った。

 とは言っても古文のまま読むのは敷居が高すぎるし、現代語訳だって十分敷居が高い。昔の話になるが、高校生の頃(1980年頃)行きつけの本屋で円地文子訳の源氏物語を見つけた。新潮社で全十巻。文庫本ではなくハードカバーの立派な本だった。憧れた。欲しいと思っていたが、高校生の小遣いで気軽に買えるようなものではなかった。

 それで、何か別の手段で(図書室で借りるなどして)読み始めたのだが、何が書いてあるのか、さっぱりわからない。だから次に少年少女向けの簡単な本を買ってみて読んでみたのだが、やっぱりわけがわからない。ぜんぜん面白くない。この時点で「源氏物語は自分とは縁のない作品なのだ」と諦めた。(注1)

 やはり同じ日本人の書いた小説であっても、1000年も時間が経過してしまうと、言葉も文化も違ってしまい、当時書かれた小説は外国の小説と同じになってしまう。それを現代の言葉に翻訳したとしても、文化的、政治的背景が理解できなかったり、訳が自分に合わなかったりすれば、話が頭の中に入ってこない。わけがわからないものになってしまう。

 つまり一人で読めない本というのが確かにあって、そういうときは先生が必要になる。(注2)それで、このたび実際に読んだのは、大和和紀の「あさきゆめみし」という少女漫画である。源氏物語を題材にした漫画はいくつか出ているが、この漫画は、全54帖を比較的正確に満遍なく描いているという評判があったのでこれを選んだ。結果、大変よい先生になってくれたと思う。全貌がつかめたので、次のステップ、現代語訳の小説に取り組むのも、ずいぶん楽になると思われる。

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 現時点での感想。紫式部はよくもまあ、これだけの壮大な小説を書いたものだと感心した。登場人物が非常に多く、それぞれが何らかの親戚関係や利害関係を持ち、その中で恋愛をし、肉体関係を持ち、喜んだり、悲しんだり、人を憎んだり・・・といった、様々な人間模様が描かれる。ストーリーも面白い。ただし現代人の我々がこれを読むことによって人の生き方を学べるような、そういう種類の小説ではない。なにしろ倫理観が現代の我々のそれとはかけ離れている。あくまでも娯楽小説、大衆小説であると見た。まあ小説なんだから面白ければそれで十分だと思う。

 面白ければそれで十分。うん、確かにそうなんだが・・・。そうは言っても、平安時代に書かれた小説が1000年経った今でも愛読され、学術的にも研究されているところを見ると、そんな単純な感想で語りきれない奥深さがあることは想像がつく。それがどんなことなのか今はわからないが、いずれにせよ概要が理解できたので、これから先、いずれ現代の小説家の訳した現代語訳に進んでみようと思っている。今までの自分の人生において、この作品にほとんど触れたことがなかったが、今回触れることが出来て良かったと思う。

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(つづく。他にも考えたことがあるので)

***
(注1)少年少女向けの本で挫折した思い出。「夕顔」という女性が死んだ経緯が全く理解できなかったのだが、「あさきゆめみし」を読んでようやくわかった。嫉妬に狂った「六条の御息所」という女性の生き霊に取り憑かれて殺されたのだった。少年少女向けだったからこういうオカルトっぽい内容は曖昧にしたのかもしれないが、そうするとわかりにくくなってしまう。そういうボカした感じの捉え所の無い話が延々と続き、根気が続かなくて読むのをやめてしまったのだった。そもそも成人向けの小説を少年少女に読ませようというのだから、よほど上手く文を書かないと、モザイクだらけのアダルトビデオみたいになってしまって、わけのわからないものになるのは明らかだ。

(注2)昔、僕が20代の頃、ある武道の道場に通っていた。その道場に慶応の哲学科の学生がおり、その人に聞いて印象深かった話。「高校時代にカントとかヘーゲルとかデカルトなどの高名な哲学者の思想に触れて憧れをもつと、そういう人の書いた本をきちんと読みたくなる。しかし難しくて普通は一人では読めない。だから専門の先生について学びたくなり哲学科に入る。そういう学生が多い」とのことだった。


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